2014-02-24

NBCの看板番組『The Tonight Show』とアメリカのTV局のオンライン戦略

『The Tonight Show』というのは1954年から始まった、NBCというTV局のアメリカの長寿番組である。
この番組の司会者が先週からJimmy Fallonという人に代わったので、見ることにした。

なぜJimmy Fallonだと見るのか?
大した理由はない。ただ、Jimmyさんが友達にめちゃくちゃ似てて気になったからである。

これは地下鉄の駅に貼ってあったポスター。ああ、どこから見てもB(友達)に見える。

B…ではなく、Jimmyさんはバスのラッピングにも登場。
いつも思うんだけど、こういうところに自分の姿が出ている、ってどういう気持ちになるものなのだろうか?

ちなみにJimmyさんは若者に大人気だそうで、アメリカ人同僚に聞くともうほとんどヒーロー扱いである。そんな彼が伝統的な番組の司会になるということで、話題を呼んでいる。

NewsweekはJimmyさんの人気について、こんな風に書いている。
Jimmy Fallon, still not yet 40 years old and equally beloved by both Williamsburg hipsters and Compton gangstas, has arrived (although he never really left, not even the building). Fallon has come to reclaim The Tonight Show in the name of both New York City and the coveted 18-34 demographic.(Newsweekより)
Compton gangstasという新しい若者のグループを知りました(西海岸のラッパー風だぼだぼファッションの若者らしい)
Williamsburgはこんなかんじ(過去記事)のおしゃれタウンで、わたしはニューヨークの吉祥寺だと思っている。

若者に絶大な支持を得るJimmyさんを司会に据えて番組を刷新し、広報に余念がないNBCであるが、これはここのところ同じような番組が11時半くらいの時間に乱立していて、視聴者を奪い合う戦いが激しいからのようである。
ざっと見ただけで、これだけ見つかった。


みんな、スーツ姿のネクタイを締めた男性が司会者で、この中にいるとJimmyさんの若さが際立つ。

Tonight Showを含めたこういう系の番組のテンプレートは、

  • 司会者がゲストを呼んで話を聞いたり、一緒にゲームをやる
  • 司会者や出演者が時事ネタを元にしたジョークを披露する

というかんじで、前者は『笑っていいとも』や『徹子の部屋』を彷彿とさせる。
後者は日本で言うところの漫才とかに通じそうである、時事ネタをうまいこと皮肉っぽいジョークにする手腕には感心させられる。

ちょうど昨日、ニュースを切り取ってラップにした、というこの動画が日本の人たちのTwitter上(Twitterに国境はないが)で話題になっていたが、これもTonight Showでやってたネタなんだよー!と声を大にして言いたかったのだった。

すごいなー言葉をつなぎ合わせて音楽をくっつけてラップにしている。
作るのは大変だったろうと推察するが。


わたしはこのネタが気に入っている。
Twitter上の会話をリアルでやってみよう!というネタなのだが、ハッシュタグうざいよねーという皮肉だと思う。
(念のため、ハッシュタグとはTwitterで製品の名前とかをつぶやくときに「#」をつけてつぶやいて、関連する情報の検索を簡単にする手法である。例えばこんなかんじ)
アメリカではテレビでも広告でも、「ハッシュタグをつけてつぶやいて」というのがめちゃくちゃ多いのだ…はいはい、マーケティング戦略ですね。はいはい。

これは初日のひとこま。
Jimmyさんが、「私がTonight Showの司会者にはならないというのに100ドルかけた人たち、覚えてるからね」とTVの向こうに話しかけるのだが、そのあと次々にJimmyさんの友達(という設定の有名人)が100ドルを支払いにやってくる、というネタである。
友達設定の人の中には、元ニューヨーク市長のジュリアーニ氏やロバート・デニーロ、ガガ様もいて、ちょいネタにしては豪華な面子だ。
ちなみに最後に写真を撮っている人は、前述のThe Colbert Reportという同じ時間帯の裏番組をやっている人だそうだ。なので、「Welcome to 11:30, bitch!」というわけだ。
日本で例えたら、お昼のタモさんの番組にみのもんたがやってきて、嫌味を言うかんじだ。…あれ?まだ両方やってるんだっけ?
ところで恥ずかしながら、bitchって男性に対しても使うんだ、ということをこの動画で学びました。


今回貼り付けた動画はYoutubeから持ってきたのだが、Tonight Showは公式サイトやYoutubeで一部を公開している。
さらに、放送翌日にはHuluでも配信される。Huluだと字幕入れられるので、時事ネタと英語の勉強にもいい。


これは、ミシェル・オバマが出たときのコメディー。Huluで字幕を入れた画面を持ってきてみた。


TV局が自分の番組をYoutubeや公式サイトでがんがん公開するのは、日本の常識からするとちょっとびっくりなのだが、各局がオンライン対応を進めるその背景にはHuluやNetflixといったオンラインストリーミングサービスの普及がある。

アメリカでTVを視聴する際には有料放送の契約をするのが一般的と言われている。
しかし、ここのところ、光やCATV回線を契約しても、TVオプションはつけずに、インターネットだけ家にひいて、番組はHuluやNetflixというストリーミングサービスで見るという人が特に若者の中で多いように感じる。
実際、わたしの周りの20代の子たちに話を聞くと、大体TVの契約はしていない。
さらに、これまでTVを契約していたのだが、TVを解約してインターネットだけ残す人たちが500万人に達しているという情報もある。(ソース) こういう人たちは「Cord Cutter」と呼ばれている。
TVを契約すると月100ドルくらいになるのだが、インターネットだけだと30ドルくらいから契約できる。HuluやNetflixが10ドルくらいなので、だいぶお手ごろである。


ここまで書いてきてなんだが、わたしは、あまりテレビを見ない。
決まった時刻にTVの前にいなきゃいけないのがいやだし、録画もめんどくさいし、好みの番組を見つけられない。
読書やゲームだったら好きな時間に好きなだけできるのがいい。(と言いつつ、土日が終わっていたりするが…)
しかし、オンラインストリーミングは、これらのTVのめんどくささをすべて解決してくれる。
好きな時刻に、好きな場所で見られるし(お風呂のお供に超いい)、好みの番組はこれまでに見た履歴からおすすめしてもらえる。また、Twitterやフェイスブックで共有するのも、されるのも簡単だ。
広告収入が減るって?ストリーミングのしくみをさっさと作って、そっちでも広告をきっちり流すようにすれば問題なし!がんばれ日本のテクノロジー!


…ということで、天下のNHK様!
いろいろ大変な時期かとは思いますが、ぜひ、朝ドラと大河ドラマあたりからオンラインストリーミングでの新しいビジネスを考えてみてはいかがでしょうか!
御社でしたら広告収入の問題はありませんし、技術開発も短期間でできるかと思いますので、ぜひパイオニアとしてこの業界への参入を!
よろしくお願いします!


…ある海外在住者の祈りでした。
NHKオンデマンドは海外からは見られないんですよ…一番必要なのに!!


◆◆◆

ちょっと前に書いた関連記事はこちら。

最強のお風呂のお供=iPad+防水カバー+Netflix(Hulu)

The Tonight Showに興味を持ったみなさん、こちらの公式サイトでいろいろ見られるのでどうぞ。
The Tonight Show公式サイト
(「すた」さんに日本からも見られるというのを確認してもらいました。ありがとうございます!)


◆◆◆

(2014/2/28追記)
なーんて言っていたら、Huluの日本事業を日本テレビが買収するというニュースが入ってきた。

Huluのサヨナラニッポン, 日本法人を日テレに売却(Tech Crunch)

本文中でNHKさんにお願いしておきながらなんだが、こういう事業は放送事業者がやると見られるコンテンツが限られてしまうという恐れもある。
日テレのコンテンツだけで囲うのか、それとも幅広くいろんなコンテンツを入れていくのか、さらにはアメリカでオンラインストリーミング事業者がやっているようにオリジナルコンテンツを流すのか、今後のビジネスに注目である。

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