2013-12-14

食欲とホームシックは自炊の母

ニューヨークに来てからというもの、「日本にいたときは作らなかったなあ」というものを作るようになった。

これは今日作った肉まん。包み方がまだまだである。

生麩。味噌田楽で食べた。練って洗ってグルテンを取り出して、という手順が超大変だった…


アップルパイ。日本にいたときも作っていたけど、パイシート使わずにパイ生地から作るのは初めてだったりする。

エビチリ。さすがに中華料理屋さんで食べれるじゃん!というつっこみが聞こえてくる。

この他にもマフィンやクッキー、スコーンあたりを日常的に作っている。日本にいたときもたまに作っていたけれど、明らかに頻度は上がっている。

ニューヨークに長く住んでいる人ほど、
「ニューヨーク(マンハッタン)は外食産業が発達してるから、家で料理しなくていいよねー。おいしいお店もたくさんあるし、むしろ材料買って作る方が大変だし、高くつく」
というようなことを主張する。

確かに道を歩けばたいていデリがあるし、デリじゃなくてもファーストフードやらスープ、サラダ等々チェーンのお店も軒を連ねている。外食も各国料理が勢揃いだ。金額についてはきちんと計算したことがないけれど、自炊だったらものすごくお得かというと、微妙なところかもしれない。

ふとした瞬間に、ふとした物が食べたくなるのは多分日本に住んでいても、海外に住んでいても一緒だろう。
例えば寒くなってきたので、肉まんが食べたくなる。日本だったら、100円持ってコンビニへ行けば解決である。コンビニじゃなくても、スーパーではたいてい冷凍のものが置いてあるし、運がよければ中華フェアーとかでおいしい肉まんが手に入る。
もしわたしがハンバーガーを定期的に食べたくなるような趣味だったら、ニューヨークでも事足りる。でも、肉まんとか生麩とか、甘過ぎないアップルパイとか、郷土料理とか、徒歩10分以内の距離で手に入らないものが運悪く食べたくなってしまったら、その欲求を満たすためにはもう作るしかないのである。食べたいものが食べたいときに食べられないことは、わたしを突き動かすものすごい力を持っているのだ。

こういうことに慣れ始めると、たいていのものは作れるのかも?という気がしてきて、これまで作ったことがないものにチャレンジするのが楽しくなってくる。それで、エビチリとかも作るようになるのである。おうちご飯は楽だし。

失敗しないのかというと、全然そんなことはなくて、何度かチャレンジしたけど違うなあと思ったのがこちら。


なんだと思います?これ。

今川焼なんですよ…
巨大だしなんかちがう…

このときはカスタードクリーム入りの今川焼が食べたくて仕方なかったのである。しかし、皮がなんとなくホットケーキっぽくなってしまうし、うまくサンドできないしで失敗を繰り返している。
うーん、小麦粉の種類の問題なのかなあ…未だ試行錯誤中である。

ところで前述の通りニューヨークでは色々な国の食べ物が食べられる。
カンボジアサンドイッチ(ここ)とか、ギリシャ料理のムサカとか、中東料理のハマスとか、ニューヨークに来てから大好物になった。
これらを日本に帰ったあと食べたくなったらわたしどうするんだろう…と考えると、
「あの人を知らなければこんな気持ちになることもなかったのに…」
という、高校生の恋愛にも似た感情がわき上がって、ちょっとセンチメンタルな気持ちになる。
食いしん坊はつらいよ。

今日のニューヨークは一日吹雪だった。
これは昼間の写真。まだ降り続いているので、明日の朝には積もっていそうだなあ。


(2013/12/17 追記)
ちょうど、最近読んだ本が「食べたいものが食べたい!!」という強い衝動について、豊富なエピソードをもとに楽しく描いていたのでご紹介。



作者の食いしん坊ぶりが伝わってくる、食べ物への並々ならぬ愛が詰まった本と言える。思い出しただけでお腹空いてきた…
この中に出てくる「ヤギのお乳」についてはまったく同感。なんでハイジだとあんなにおいしそうに飲んでるんだろうなあ。

2013-12-01

隣国なのに全然違う国、カナダ

お休みを利用して、世界で最も住みやすい町ランキングで何度も上位を獲得しているカナダのバンクーバーへ行ってきた。
ニューヨークのサンクスギビングのパレードはホテルのテレビで見た。そういえば独立記念日もカナダにいたし、ニューヨーク在住なのにニューヨークのイベントをあまり楽しんでいないわたしである。いるかわからないけど、来年に期待。(参考記事:『モントリオールに癒された独立記念日』)

バンクーバーでは、現地にお住まいの主夫のおがしんさん(ブログ)がガイド兼運転手として、観光地からおいしいレストラン、現地のスーパーまでいろいろ案内してくださった。本当にありがとうございます!

スタンレーパークからの眺めをパノラマ写真でお送り。
自然がいっぱいなのに、ダウンタウンは都会で、おしゃれなお店も多い。
日本に住んでいるバンクーバー出身の友人が「横浜に近いかなあ」と言っていたのがちょっとわかる。ダウンタウンのマンション群はみなとみらいやお台場みたいな感じ。ちょっと郊外に行くと横浜市営地下鉄が走っていそうな高級住宅街。山がすぐ近くに見えるのは、横浜のはじっこの方に似ているかもしれない。
でも、自然の豊かさは横浜の比ではない。寒くないなあ、というのがバンクーバーに降り立った第一印象で、冬期オリンピックはいったいどこでやったんだろう?という疑問が生じたのだけど、スノーボーダーにその名を轟かせるウィスラーもあれば、バスで1時間かからない場所にもスキー場がある、というそこだけ見たら札幌か長野かみたいな環境も兼ね備えているのである。

冬のキツラノビーチ。流木ちっくなベンチが風景にマッチしていてすてき。
寒空風に見えるが、気温は10度近くあって過ごしやすい。

ブリティッシュコロンビア大学(UBC)。キャンパスが超広大。

UBCグッズ。キティーちゃんとどーもくんがある…
 

Go Fish Ocean Emporiumという海沿い?湾沿い?のお店で食べたオイスターバーガー。
牡蠣がふっくらほどよく火が通されていて超おいしい。

こちらはGranville Island Tea Companyというお店で、横浜の赤レンガ倉庫をもっとひろくした感じのグランビルアイランドというお店やギャラリーが並ぶの中にあるお店。
バンクーバー出身の子が「ここのマサラチャイが飲みたい。おすすめ!隠しメニューでショウガも入れてもらえます」と言っていたので試してみた。冬にぴったりのスパイシーなチャイ、おいしい。

おしゃれデパートのディスプレイ。こんな格好でスキーしちゃだめ!!寒いよ!!というつっこみをしてしまった。

在住の方いわく、バンクーバーにはこんな特徴があるそうだ。
  1. サービスが悪い
  2. 物価が高い
  3. 品揃えがしょぼい
サービスについては、ニューヨーク砂漠から行っているからか全然気にならなかった。
むしろ、人がせかせかしてない分心地よさを感じる。
空港で余ったカナダドルをUSドルに替えようとしたときに、カウンターのお姉さんが、「小銭もある?USドルの小銭が混ざっても大丈夫。一番いい方法で両替します」
と申し出てくれたのには感動した。
ふらりと入った客単価10ドル以下と見られるベトナム料理屋さんの店員さんもそんなに感じが悪い風でもないし、中華料理屋さんもお茶をテーブルにこぼして拭く、みたいなことしないしさー…って、これは自分の期待値の低さを再確認せざるを得ない。

物価は確かに高い、というかマンハッタンと比べても遜色ないし、その上を行くものもある。ビールの値段はだいたい倍くらいである。
さらにものによっては税金が12%かかる。信者の夫曰く、アップル製品の価格はアメリカよりも高かったそうで、それに税金12%が乗ってくることを考えるとちょっと購買意欲を失うかもしれない。ちなみにその代わり、医療費は無料で、典型的な大きな政府である。

品揃えのしょぼさは、Amazonで検索するとよくわかるそうだ。在住者の方がアメリカとカナダのAmazonで商品を検索したら、数百vs一桁くらいのレベルで表示されるアイテムの数に差が出たとのことである。
物価の高さと品揃えのしょぼさのせいで、カナダからアメリカへ買い出しに行く人が後を絶たないらしいが、免税範囲が雀の涙な上に、税関のチェックが厳しい。24時間滞在しないとお酒類は買っちゃだめ、免税範囲も200カナダドル、怪しい人は容赦なく税関でチェック…ということでアメリカから行ったわたしたちもなぜか税関検査にひっかかったのであった。
去年の記事だけど、こんなニュースも見つけた。


拡大されても200ドルって、そんなに買えないよね…

しかし、毎日ニューヨークで買い物を迫る勢いの広告の海にもまれていたわたしは、逆に広告を見ても「あいつらのお金を使わせる圧力に負けず、本当にほしいものだけを買おう!」という信念めいたものを持つようになった。ほしいものがないのはちょっと困るけど、そもそも日本みたいなかゆいところに手が届く便利グッズがお手頃価格で売っている場所ってきっとそんなにないだろうし、衣食住が立ち行かなくなるみたいな必需品はそこまでないだろう。電化製品は高くてちょっと悔しい思いをするけれど、買えないことはないだろう。
エアカナダの飛行機の中では新聞を配っているし、機内テレビもWi-Fiも無料。機内食はさすがに出なかったけど、航空券が安いわけでもないのになんでも有料にするアメリカの航空会社とは姿勢が違う。

ともあれ、アメリカ、というかニューヨークほどお金儲けに対する前のめりな姿勢を感じないのがカナダである。隣のアメリカよりも、ヨーロッパのどこかの国や日本の方が雰囲気が近い。田舎ということなのだろうか。
そんな雰囲気が居心地がいいなーと感じるあたり、やっぱりわたしには市場原理主義万歳、ものは消費してなんぼ、女性はみんなフルメイクでタイトな服装をしている「意識の高い夢追い人の街」、ニューヨークが合ってないのかもしれない…という気持ちがわき上がった。

以前も書いたけれど(過去記事:『「欧米」というくくりに物申す』)、東京とニューヨークは似ている。さらに政府は景気を上げるために色々な施策をやろうとしているけれど、これで超市場原理主義に傾かれたら、活気はあるだろうけど、「おもてなし」どころじゃない、地獄の沙汰も金次第的なぎすぎすした街になりそうだなあと思っている。
もちろん、経済的に成長しなきゃいけないというのはなんとなくわかるんだけど、人口も減るし、別の軸での発展を考えてもいいんじゃないかなあ。バランスをとることは難しいだろうし、環境の変化があって一定に保つこともできないだろうから、経済成長側に寄ったり、社会保障側に触れたり、というゆらぎを繰り返しながら一番いい形を目指していくのだろう。(と思いたい)

バンクーバー、ひいてはカナダを一言で表すと、「都会もたまにあるけど基本的にのんびりした田舎」である。この場所がいいなあ、と思うのは日本での田舎暮らしに憧れる気持ちに似ている。
刺激が欲しい!という人には多分あまり向いていない場所だけど、ゆったりと人生を楽しみたいという人にはかなりおすすめの場所だなあと思った。
…いいなあ、住みたい。