2018-10-22

『朝が来る』読書感想文 〜つらいフィクションは現実の鏡〜



特別養子縁組を題材にした小説『朝が来る』を読んだ。最近、養子を迎えたところ(試用期間中)なので胸に迫るものがあり、文章にしてみることにした。(noteに書いた文章の再掲です)

ひとことで言うと「つらい」

解説には、「このラストシーンはとてつもなく強いリアリティがある。」と書かれている。しかし、この解説にはあまり同意できない。いい意味でドラマ感満載のラストシーンより、そこに至るまでのふたりの主人公、養親の佐都子と実親のひかりの境遇があまりにもリアリティに溢れていて、それがつらかった。


仕事から不妊治療、養子を検討するまで

たぶん、わたしの友達や30代中盤から後半の人がこの本を読んだら、佐都子に感情移入する人が多いかもしれない。仕事は楽しい、夫とふたりの生活もエンジョイしている。結婚◯年、気づいたら子どもがいない。これでいいのかと考えて、子どもがほしいと思い、不妊治療を始める。最初、夫は協力的でない。悩んだ挙句、高度な治療を始めて、結果に一喜一憂する。実家が心配と称して干渉してくる…

あー、書いててつらい。リアルすぎる。特別養子縁組に至るまでの佐都子夫婦の境遇は40代の足音が聞こえてくるわたしの周りで起きていることそのものだ。
特別養子縁組に至るまでの部分は経験した人は少ないかもしれないが、こちらもやっぱりリアリティに溢れている。特に、支援団体の説明会が迫真の描写と言える。会場の重苦しい空気、40代以降が中心の参加者、みんな不妊治療で追い込まれている、養子は「普通の家庭」からはやってこないという説明。ちなみに本作では割愛されていたが、現実では説明会の後でこれまた厳しい(団体による)審査があって、期待値が低い不妊治療ギャンブルとはまた違う、人にジャッジされるつらさもあったりする。


妊娠で追い詰められる若い女子

一方、中学生で妊娠して、子どもを産むことになるひかりの人生は、なかなか想像しづらいかもしれない。しかし、14歳以下の妊娠は30年前に比べたら増えているし(2015年で年間42件)、中絶数も変化していないそうだ。

本人の意思も確認せず、娘の妊娠を受け止められない母親が段取りをして、妊娠の事実がばれないように遠方の支援団体へ行かされる。出産した子どもを佐都子夫妻に託し、元の生活に戻ろうとするが、子どもの父親である彼氏はなかったことにしているし、高校受験にも失敗。家族との関係は悪化の一方で、高校在学中に家出してしまう。信頼できる人が誰もいない場所で、未成年のひかりはどんどん追い詰められていく。実子を託した佐都子が武蔵小杉のタワーマンションで幸せな日々を送っているのとは対照的で、若年妊娠の問題点を突きつけてくる。


フィクションだと知っておいてもらいたいこと

リアルだと言い続けたこの作品だが、すべての特別養子縁組がこうではないというところはつけ加えておきたい。特別養子縁組の支援団体は厚労省に届け出たところだけでも29あり、それぞれ方針が違う。

・ひかりが出産後、赤ちゃんを1回しか抱っこできなかった
・ひかりが佐都子の住所を知らされていなかった
・養親登録をしてからは避妊する、不妊治療をやめる必要がある
・養親登録にあたって、養親側の事情を考慮する(作中では、「個々の事情への対応を検討」と団体の人が言っている)
あたりは本当に団体によって異なるので、書き添えておく。


つらいフィクションは現実の鏡

作者は「報道やノンフィクションでないからこその、小説だから描けることというのもあると思うんです」と話しているが、本作はほとんど現実だ。だから読んでいてつらい。今日も日本のどこかで、子どもができないことで親族から責められる人、不妊治療の経過に一喜一憂する人、予期しない妊娠をしてしまった人とその家族がいる。彼らと子どもが幸せになれるように、後悔のない選択ができることを祈るばかりだ。

2018-10-04

3人家族になりました(試運転中)


産んでないけど、家族が増えました!

生まれたばかりの男の子が、わが家にやってきた。子育てはしたい。でも時間とお金とストレスがかかる妊活にはテンションが上がらない。そんなわたしたち夫婦は、最近、特別養子縁組の支援団体に登録したばかりだった。法律で定められている6ヶ月の監護期間を経て、実の家族になる予定だ。

特別養子縁組で子どもを受け入れるためには、法律で定められたそれなりのボリュームの研修を受ける必要がある。研修の科目を見てもらうと、妊娠したときに受ける両親学級とはけっこう中身が違いそうな感じがする。

【養子縁組里親研修の内容】
  • 児童福祉論(講義) 
  • 養護原理(講義) 
  • 里親養育論(講義) 
  • 発達心理学(講義) 
  • 小児医学(講義) 
  • 里親養育援助技術(講義) 
  • 里親養育演習(講義・演習) 
  • 養育実習(実習) 


(参考 厚労省



子どもの持つ「よい環境の中で育てられる」権利や、保護者の養護を受けられない子どもを社会的に保護する「社会的養護」についても学んだ。

「養子を育てる」と伝えたときに、「自分で産んだ子をかわいがれないなんておかしい」と産みの母親を非難をする声がたまにある。もちろん、その妊娠が幸せなもので、生んで育てたいという人がいたら、その意志を尊重するように行政がサポートすることはとても重要だ。でも、そうじゃない妊娠・出産はどうしても発生してしまうだろう。その中で生まれた子どもと実の母親が幸せになるために、養子縁組というのは選択肢としてあるべきだ。


今回、急に育休を取ることになったが、友人や会社の人たちのサポートが手厚くて、感謝しかない。たくさんの人たちが祝福してくれたし、わたしたち夫婦の決断を勇気あると讃えてくれる声もあった。ベビーグッズもたくさんもらった。哺乳瓶とおむつくらいしか買ってないよ本当に。

また、養子縁組をすると伝えたときに、「今まで誰にも話したことないんだけど」と前置きをして、自分の家族について話してくれる人がたくさんいたことも印象的だった。

「子どもがいないことを気にしていて、夫婦で養子縁組について考えたことがあるけど、うまくいかなかった。だから応援したい」

「経済的な理由で一番下の子どもを中絶しようと思った。でもとても立派に成長したので、やっぱり育ててよかったと夫婦で話した」

こんな話だ。割と仕事で成功しているおじさまたちからこんな話を聞いたので、そんな悩みがあったんだと驚いた。子育てについて思うところがあるのは子育て世代だけではないのだと気付かされた。「わかりあえる」と言ったら失礼かもしれないけど、目指す社会の姿を共有することはできるかもしれないと思った。


正直、まだ実感がわかないし、「息子」と呼ぶのもなんとなく気恥ずかしい。重い責任がのしかかった感もある。でも、毎日新しい発見があって、それを大好きで尊敬しているパートナーとわかちあうのはとても幸せだ。ここに至るまでの義実家とのバトルを忘れるくらい、充実した時間が流れていく(遠い目)

わたしの人生を記した本があったら、新しい章に入った気がする。章のタイトルはまだない。