2013-05-13

オールドボーイズネットワークとエイリアンのわたし

橋下知事の発言が、ABCやBBCでもニュースになっていた。

Japanese politician defends use of sex slaves(ABC)
Japan WWII 'comfort women' were 'necessary' - Hashimoto(BBC)

ABCの見出しひどい・・・・
しかし、この発言はないよなあ。
こういう失言があるから、政治家や企業のトップは何度も何度も推敲された紙を読まされるんだなあ、ということを実感する事件である。
ここまでの失言ではなくても、人の発言って、その人がこれまでの人生で考えてきたこととか、スルーしてきたことがすごくよくわかるよなあ、と思う。

そんなことを実感したのは少し前。
日本人駐在員数人で話していた時のことである。
どうでもいいtipsだけど、日本人駐在員、と聞いたら9割男性と考えていい。この日も男性数人と女性はわたしひとりという比率だった。

時間にして、1時間ほど、彼らはずーーーーーーっと、ゴルフの話をしていたのである。
どこどこの会社の○○さんのハンデはいくつ、△△会っていうので毎月1回は回ってて、どのコースはいい、クラブはどこのやつ、アメリカの通販サイトがいい、うんぬんかんぬんうんぬんかんぬんエンドレス。

うわー。参加できない・・・・

申し訳ないなあ、と思う部分は少しあるけど、うまい話の盛り上げ方もできずに、「へー」とか相槌うちながら聞いていたわたしである。

いつ終わるのかなーと思っていたら、1時間後くらいに、やっと話が振られた。
「こんなにゴルフに夢中になってる男って、バカだなあ、と思うでしょ?」
いや、スポーツとして面白いですよね。わたしもやったことがあるので、わかります、と言ったところ、

「あー、わかってくれるんだー!うちの奥さんはわかってくれなくてさー!」
「そうそう、家族サービスなんか全然してなくって」
「ゴルフに毎週行けるあたり、単身赴任でよかったと思うんだよねー」

ああ、結婚2年目のわたしの夢を壊さないでくれますか、みたいなコンボを食らった。


「実は、うちの嫁も一時期やってたんだよね。でも、アレでやめちゃったんだ」
アレで、のところで、その人はお腹の前に手で円弧を描いた。

え、これはまさか・・・・!!

「ああ、うちもそうなんですよ。その頃は○○に駐在してたんですけど、コレで
描かれる円弧もう1つ。

やっぱり、まさかの妊娠を示すオヤジジェスチャー!!

日本にいたころ、友達がふざけて、「アレがコレで」ってやってたのを思い出す。
このジェスチャー、ほんとにやってる人がいるんだ・・・・!!
わたしにとっては、「ナウなヤング」って言ってるみたいな、恥ずかしいというか、ネタとしか思えない仕草だったのである。

その後、やっと存在に気づいてもらえたようで、わたしの話になった。
「でもさ、うささん(仮名・わたしのこと)はアメリカに駐在になっちゃったけど、旦那はどうしたの?」
「一緒に、アメリカに連れてきました」
ええっと驚くわたし以外の男性陣。ここまではわたしも慣れたものである。
「フリーランスなので、こちらでも仕事ができればと思って一緒に来ました」

反応は、わたしの想定問答の斜め上を行くものだった。

「日本に根がないから、連れてこれたんだねえ」


根がない・・・・!?
つまり、根なし草って言いたいのだろうか。
これはこれまでにない反応だなあ、と脳内想定問答集に書き込んでいたところ、別の人が、よくわからないんだけど、と前置きの上、困惑したように聞いてきた。

「その場合って、旦那さんにはビザは出るの?」
「はい、わたしの配偶者ビザで」
「え!旦那さんの方が配偶者ビザで来るなんてできるの?」

!!!!!!

わたしにとっては目から鱗どころか目が落ちちゃうくらいの衝撃的瞬間であった。
配偶者って!言ってるじゃない!!「妻ビザ」なんて言ってないじゃない!!!


根が深いなあと思ったのは、彼らが何ひとつためらわずに、すらすらと上記の発言をしたことである。
彼らにとっては、
「土日は男だらけでゴルフ」とか、
「ゴルフのために単身赴任は家族に気を遣わなくていいから楽」とか、
「会社員以外は根なし草」とか、
「配偶者ビザで来る人=妻」
みたいな考えが定着していて、本当に素直に思ったことを言っただけなのである。
自分の考えを見直す必要性をこれまで迫られたことがないし、その発言でわたしのように「うわっ、そう来たか!」と思う人がいるなんてことも想像したこともないのであろう。

これ、あれじゃない、オールドボーイズネットワークってやつじゃない・・・・

もちろん、日本にいたころも、こういう人はちらほらいた。
でも、駐在員の世界って、男性が圧倒的に多いので、男社会的なつながりがより強固なものになるのではないだろうか。
もしかしたら、最近流行りの「女性活用」とか「セクハラ」もどこへやら、の人が多いのかもしれない。訴えられることには敏感かもしれないけど。

こういう凝り固まったちょっと特殊な社会には、やっぱり、『Lean In』でシェリル・サンドバーグさんが言うように、女性リーダーが必要なのだと思う。




一番必要としている人が、その必要性に気づいてないだろうけど。
(過去エントリー:シェリル・サンドバーグの『Lean In』がめちゃくちゃおもしろい(※まだ読み終わってない)


ここで男性社会に対して憤っていても何も変わらないので、わたしはせっせと

・夫を配偶者ビザで帯同させた
・夫婦別姓でIDを作った
・駐在中に出産して、制度を作った(未来)

という前例を作って、後に続こうという人や、道が見えないという人たちを励ましつつ、日本の組織とか、社会の多様化の一助となれたらな、と思う。

しかし、残念ながら、日本の大都市の首長ですら冒頭のような発言をしちゃうような状況なので、道は長く険しいなあ、とも感じるのであった。

※なお、このエントリーの会話部分は、臨場感たっぷりにお送りしたかったので、彼らの発言をなるべくそのまま書いています。



4 件のコメント:

  1. こんにちは。
    橋下氏の発言が日本人男性の総意だと思われたら心外ですよね。
    彼の発想は一般人とはかけ離れていると思います。
    かく言う私は妻の扶養家族のL2ビザで米国滞在してるオヤジです。
    はるか昔、当時の上司に「酒は飲めないしパチンコも競馬もやりません」と言ったら「休みの日にやることないだろう?」と、真面目に心配されたことがありました。
    彼の目には私もエイリアンに映っていたのでしょう(笑)。

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  2. Joeさん、こんばんは!
    L2ビザでいらしているんですね。初めて同じパターンの方を見つけて心強いです。
    このエントリーでは、わたし視点の男性中心の社会に対する疑問点を書いていますが、男性の中にもいろんな人がいて、いわゆるJoeさんのようにマッチョな男性でない方も苦労されるんだろうなあ…と考えさせられました。
    示唆に富んだコメントありがとうございました!

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  3. たにっちょ2013年5月15日 20:51

    配偶者、、、私でも意味知ってるわ(笑)
    そして、会話に時々登場する「オールドボーイズ節」は、新鮮すぎる!
    そうか、今回の転勤で一緒に行く旦那様は、ある意味「フリーランスの強み」だなと思っていたけど、考え方は様々なのね。。。
    よし、エイリアンとして残す前例(?)はあと一つ!
    転勤して半年で2つの前例を作ったなら、後1つも期待できる♪

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  4. たにっちょ、おはよーー!
    すっかり返信が遅くなってしまった!
    ほんと、配偶者の意味は中学生でも知っているような・・・!?って思ってびっくりしたよー。
    懲りずに前例を作っていきたいと思います。ふふふ。

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