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2020-06-18

「赤ちゃんポスト」を「ハッピーゆりかご」に。女性ジャーナリストたちの連帯に泣いた

Photo by Michael Walter on Unsplash


女性ジャーナリストたちの「薔薇棘勉強会」

先日、読んだ本の中に、女性ジャーナリストで作る「薔薇棘勉強会」というグループの活動が載っていた。人数なんと600人!その薔薇棘(略します)が、日本での養子縁組の啓発、ひいては法制化に貢献していた…というのだから、フェミニストで、養子母のわたしとしては気になりすぎる。

足をどかしてくれませんか。——メディアは女たちの声を届けているか

本では、NHKの山本記者が薔薇棘を立ち上げた経緯や、2012年に貧困などからくる子どもの虐待死と、赤ちゃん縁組について勉強会をしたことがきっかけとなり、複数のメンバーが自分の所属するメディアで特別養子縁組について取り上げたことが書かれている。女性のネットワークやコミュニティの強さを感じて感服したのだが、この件を研究者の清水麻子さんが詳細にまとめた論文に心が震えたのだった。

日本におけるジャーナリストネットワークと社会的弱者支援の可能性

「赤ちゃんポスト」はメディアが生み出した

2006年、熊本の慈恵病院が、予期しない妊娠をした女性と、その子どもを救うために「こうのとりのゆりかご」を設置した。これをメディアは「赤ちゃんポスト」というネガティブな名前で報道した。以下は「赤ちゃんポスト」と「こうのとりのゆりかご」がどのような割合で使われていたか示す表。赤ちゃんポストがほとんどでドン引きする。


著者によると、こうのとりのゆりかごの報じられ方は、

「親の身勝手な理由で捨て子を助長する」vs「困窮した母子は貧困などの事情を抱えている」

「社会にこうした装置ができること自体が倫理上の問題」vs「倫理面より赤ちゃんの命を救うべき」

という二項対比だったとのこと。確かに、対比をしてバランス良く見せるこのやり方(「客観報道」というらしい)は新聞などでよく見るが、著者はこの客観報道について、社会問題を解決する役には立たないと切り捨てている。

こうした「客観報道」は,「最大多数の最大幸福」の原理に引っ張られ,
現状にある「妊娠し,子どもを捨てる身勝手な親」というイメージを覆さない。もちろん社会改革への議論に繋がることはあるが平行線に始終してしまう。結果として「予期しない妊娠をした女性と子どもの命を救う」という新たなイノベーションは導かない。

女性ジャーナリストたちによる問題の再定義

2012年、薔薇棘を主催する山本記者は、予期しない妊娠や経済的事情など、さまざまな理由によって「産んでも育てられない女性」が存在すること、妊娠に苦しんで自死してしまう女性がいること、生まれた子どもが捨てられて死亡してしまうことなどを知ったそうだ。

そして育てるのが困難な子どもを子どもを希望する夫婦に特別養子縁組をする「愛知方式」について勉強会を行い、自ら番組を作った。作られた3本の番組は、0才児の虐待死を防ぐことをめざし、『「予期しない妊娠をした女性と,その子ども」を包摂する』という明確な意図を持った「主観報道」だったとされている。


その後、薔薇棘メンバーが自分のメディアで問題を発信する。この見事な連携プレイ、『オーシャンズ8』を思い出したのはわたしだけだろうか…(いやあっちはちょっと悪いかんじだけど)


女性ジャーナリストたちは、困難な状況にある母親に思いを馳せ、解決するべきだという信念を持ってこの問題を発信し続けた。結果、赤ちゃん縁組は子どもを救う方法として前向きに受け止められるようになった。


そして「赤ちゃんポスト」は「ハッピーゆりかご」になった

薔薇棘の勉強会を通し、日本財団は養子縁組を促進する「ハッピーゆりかごプロジェクト」を2013年に立ち上げた。赤ちゃんポストと揶揄されていたものが、「ハッピーゆりかご」という温かくて、幸せそうな名前になったことに感動する。

日本財団 ハッピーゆりかごプロジェクト

さらに2016年には当時の塩崎厚生労働大臣によって児童福祉法が改正され、すべての子どもを家庭で育てる原則や、子どもの権利が初めて(!!!)日本の法律に盛り込まれた。

「どんな親でも必要なのは愛」 塩崎恭久氏が語る里親と特別養子縁組のこれから


つながればできることがある

ハフィントンポストによると、女性の記者は2割強。組織の中で発言力を持つためには30%が必要だというので、全然足りていない。トップに近づけば近づくほど女性の割合は減っていき、41社中30社は女性役員ゼロだそうだ。

メディアの“女性活躍“はどうなってる?41社中30社で女性役員ゼロ【国際女性デー】

残念ながら、この割合が明日突然50:50になることはない。それは悲しいことだけど、薔薇棘メンバーが見せた共感と連帯、社会問題を解決しようとする熱意には勇気をもらった。

それぞれの持ち場では、女性たちはマイノリティかもしれない。でも、ちょっと周りを見渡してみれば、仲間がいるのだ。そんなことを考えた2020年の国際女性デーだった。

2019-09-23

社会で子育てってなんだ? 『キッズファイヤー・ドットコム』を読んで

ひょんなことから、海猫沢めろんさんの『キッズファイヤー・ドットコム』を知った。

ホストが捨て子を拾って、世間に非難されながらもクラウドファンディングで子育てする——そんな内容の小説である。
意味がわからない。読むしかない。…はい、読みました。


キッズファイヤー・ドットコム

ホスト描写の細やかさ、漫画的な演出、癖のあるキャラ、出だしから疾走感たっぷりである。これまたギャグかと思っちゃうくらい、主人公の神威の前に突然赤ちゃんが登場。軽妙かつ、生々しいタッチで赤ちゃんのケアをする神威の姿が描かれる。さすが作者が育児をされていただけある。

この作品を読んでおもしろかったのは、女性の影がほとんど出てこないことだ。産みの母も、ホストクラブの客も、赤ちゃんの面倒を見ようとしない。この点、同じように自分と地のつながらない子どもを育てながらも、ほぼ女しか出てこない『八日目の蝉』とは真逆のアプローチだ。クラウドファンディングで高額の入札をした人物は女性だが、理由もいわゆる「母性」からはかけ離れている。

『私、能力も教養もないのに、子供がいるっていうだけで根拠のない自身を持ってる女が大嫌いなの。そういう女たちへの復習かしら(略)
女の幸せが子供を生むことだなんて旧弊な価値観にはほんとうにうんざりよ。でもね、その価値観を完全に否定できない自分がいるのも事実なのよ』

後半部分がわたしの心に刺さった。わたしも押し付けられた女の幸せはまっぴらごめんだし、実際に母親稼業向いてないなあと思う瞬間がたくさんあるのだが、それは古い価値観からどうしても抜け出せない自分のせいなのかもしれない。

ちなみに本作は前半は2015年、後半は2021年の設定だ。2021年パートを読み終わる頃にはぼろぼろ泣いていた…。後半はディストピア感も漂っていてたまらない。「社会で子育て」ってよく聞くけど、どういうことなんだろうなあ、とぼんやり考えてしまう読後だった。とりあえずもっと予算はつけていいと思うが。

2018-10-22

『朝が来る』読書感想文 〜つらいフィクションは現実の鏡〜



特別養子縁組を題材にした小説『朝が来る』を読んだ。最近、養子を迎えたところ(試用期間中)なので胸に迫るものがあり、文章にしてみることにした。(noteに書いた文章の再掲です)

ひとことで言うと「つらい」

解説には、「このラストシーンはとてつもなく強いリアリティがある。」と書かれている。しかし、この解説にはあまり同意できない。いい意味でドラマ感満載のラストシーンより、そこに至るまでのふたりの主人公、養親の佐都子と実親のひかりの境遇があまりにもリアリティに溢れていて、それがつらかった。


仕事から不妊治療、養子を検討するまで

たぶん、わたしの友達や30代中盤から後半の人がこの本を読んだら、佐都子に感情移入する人が多いかもしれない。仕事は楽しい、夫とふたりの生活もエンジョイしている。結婚◯年、気づいたら子どもがいない。これでいいのかと考えて、子どもがほしいと思い、不妊治療を始める。最初、夫は協力的でない。悩んだ挙句、高度な治療を始めて、結果に一喜一憂する。実家が心配と称して干渉してくる…

あー、書いててつらい。リアルすぎる。特別養子縁組に至るまでの佐都子夫婦の境遇は40代の足音が聞こえてくるわたしの周りで起きていることそのものだ。
特別養子縁組に至るまでの部分は経験した人は少ないかもしれないが、こちらもやっぱりリアリティに溢れている。特に、支援団体の説明会が迫真の描写と言える。会場の重苦しい空気、40代以降が中心の参加者、みんな不妊治療で追い込まれている、養子は「普通の家庭」からはやってこないという説明。ちなみに本作では割愛されていたが、現実では説明会の後でこれまた厳しい(団体による)審査があって、期待値が低い不妊治療ギャンブルとはまた違う、人にジャッジされるつらさもあったりする。


妊娠で追い詰められる若い女子

一方、中学生で妊娠して、子どもを産むことになるひかりの人生は、なかなか想像しづらいかもしれない。しかし、14歳以下の妊娠は30年前に比べたら増えているし(2015年で年間42件)、中絶数も変化していないそうだ。

本人の意思も確認せず、娘の妊娠を受け止められない母親が段取りをして、妊娠の事実がばれないように遠方の支援団体へ行かされる。出産した子どもを佐都子夫妻に託し、元の生活に戻ろうとするが、子どもの父親である彼氏はなかったことにしているし、高校受験にも失敗。家族との関係は悪化の一方で、高校在学中に家出してしまう。信頼できる人が誰もいない場所で、未成年のひかりはどんどん追い詰められていく。実子を託した佐都子が武蔵小杉のタワーマンションで幸せな日々を送っているのとは対照的で、若年妊娠の問題点を突きつけてくる。


フィクションだと知っておいてもらいたいこと

リアルだと言い続けたこの作品だが、すべての特別養子縁組がこうではないというところはつけ加えておきたい。特別養子縁組の支援団体は厚労省に届け出たところだけでも29あり、それぞれ方針が違う。

・ひかりが出産後、赤ちゃんを1回しか抱っこできなかった
・ひかりが佐都子の住所を知らされていなかった
・養親登録をしてからは避妊する、不妊治療をやめる必要がある
・養親登録にあたって、養親側の事情を考慮する(作中では、「個々の事情への対応を検討」と団体の人が言っている)
あたりは本当に団体によって異なるので、書き添えておく。


つらいフィクションは現実の鏡

作者は「報道やノンフィクションでないからこその、小説だから描けることというのもあると思うんです」と話しているが、本作はほとんど現実だ。だから読んでいてつらい。今日も日本のどこかで、子どもができないことで親族から責められる人、不妊治療の経過に一喜一憂する人、予期しない妊娠をしてしまった人とその家族がいる。彼らと子どもが幸せになれるように、後悔のない選択ができることを祈るばかりだ。

2018-10-04

3人家族になりました(試運転中)


産んでないけど、家族が増えました!

生まれたばかりの男の子が、わが家にやってきた。子育てはしたい。でも時間とお金とストレスがかかる妊活にはテンションが上がらない。そんなわたしたち夫婦は、最近、特別養子縁組の支援団体に登録したばかりだった。法律で定められている6ヶ月の監護期間を経て、実の家族になる予定だ。

特別養子縁組で子どもを受け入れるためには、法律で定められたそれなりのボリュームの研修を受ける必要がある。研修の科目を見てもらうと、妊娠したときに受ける両親学級とはけっこう中身が違いそうな感じがする。

【養子縁組里親研修の内容】
  • 児童福祉論(講義) 
  • 養護原理(講義) 
  • 里親養育論(講義) 
  • 発達心理学(講義) 
  • 小児医学(講義) 
  • 里親養育援助技術(講義) 
  • 里親養育演習(講義・演習) 
  • 養育実習(実習) 


(参考 厚労省)



子どもの持つ「よい環境の中で育てられる」権利や、保護者の養護を受けられない子どもを社会的に保護する「社会的養護」についても学んだ。

「養子を育てる」と伝えたときに、「自分で産んだ子をかわいがれないなんておかしい」と産みの母親を非難をする声がたまにある。もちろん、その妊娠が幸せなもので、生んで育てたいという人がいたら、その意志を尊重するように行政がサポートすることはとても重要だ。でも、そうじゃない妊娠・出産はどうしても発生してしまうだろう。その中で生まれた子どもと実の母親が幸せになるために、養子縁組というのは選択肢としてあるべきだ。


今回、急に育休を取ることになったが、友人や会社の人たちのサポートが手厚くて、感謝しかない。たくさんの人たちが祝福してくれたし、わたしたち夫婦の決断を勇気あると讃えてくれる声もあった。ベビーグッズもたくさんもらった。哺乳瓶とおむつくらいしか買ってないよ本当に。

また、養子縁組をすると伝えたときに、「今まで誰にも話したことないんだけど…」と前置きをして、自分の家族について話してくれる人がたくさんいたことも印象的だった。

「子どもがいないことを気にしていて、夫婦で養子縁組について考えたことがあるけど、うまくいかなかった。だから応援したい」

「経済的な理由で一番下の子どもを中絶しようと思った。でもとても立派に成長したので、やっぱり育ててよかったと夫婦で話した」

こんな話だ。割と仕事で成功しているおじさまたちからこんな話を聞いたので、そんな悩みがあったんだ…と驚いた。子育てについて思うところがあるのは子育て世代だけではないのだと気付かされた。「わかりあえる」と言ったら失礼かもしれないけど、目指す社会の姿を共有することはできるかもしれないと思った。


正直、まだ実感がわかないし、「息子」と呼ぶのもなんとなく気恥ずかしい。重い責任がのしかかった感もある。でも、毎日新しい発見があって、それを大好きで尊敬しているパートナーとわかちあうのはとても幸せだ。ここに至るまでの義実家とのバトルを忘れるくらい、充実した時間が流れていく…(遠い目)

わたしの人生を記した本があったら、新しい章に入った気がする。章のタイトルはまだない。

2016-02-20

「女性活用」で男社会で利用されそうになったわたくし


年末からいろいろアイタタタな事件がたくさんありまして、2016年初のブログ投稿になってしまった…あ、あけましておめでとうございます!きゃー。

さて、最近日本では、「一億総活躍」とか「女性が輝く社会」とか、まぶしすぎて涙で明日が見えないお題目を掲げた取り組みが絶賛進行中。うざいなーと思いつつ、自分には関係ないと思っていた。活躍はしていないし、輝いてもいないが、ともあれフルタイムで働いて年金納めているし、悩みと言ったらコウノトリがいっこうにやってくる気配がなく、出生率1.8目標にはまったく貢献できなそうな上に、「仕事忙しいから、子供なんて無理だよねえ」みたいな勝手な哀れみを、あんまり自分のことを知らない人に投げかけられるくらいだったからである。

相変わらず無頓着なわたくし。駐在生活も3年が経って、鈍感なわたしでもわかるくらい、日本へ帰らなければいけない雰囲気が漂ってきていた。本社側の人事担当の上司に希望の部署を聞かれたので、今の仕事と連続性がある、本社の仕事をいくつか言っておいた。

1月のある日、その上司から、「春には異動する」と教えられた。どこに行くんですか?と聞いたところ、こんな風に返されたのである。

・まだ決まってないから具体的な場所は教えられない
・でも東京じゃない。地方都市
・英語と、ある分野の技術力が必要なポジション
突然言われたわたしは、「ぽかーん」である。10年ちょっと働いて、さすがにいろいろわかっているはずのこの会社で、この条件に当てはまる部署がまったく思い浮かばなかったのである。

さらに、地方都市って。上にも書いたとおり、希望は本社の部署だったわけだが、それは自分のことだけでなく、夫がいるからである。確かに駐在員になって以降、夫はずっとわたしについてきてくれて、フリーで仕事をしているが、地方都市となるとちょっと勝手が違ってくる職種なのだ。というのも、夫のスキルが使える仕事はアメリカではたくさんあるが、日本だとほとんど東京にしかない。

そして一番謎だったのは、結婚しているとわかっているのに、妊娠率低下が叫ばれる微妙なお年頃の女性にひとことも相談せず、勝手に進めていた上司の常識だった。ちなみにこの上司、今まで女性の部下がいたことがないらしい。

こいつはだめだ…、と思ったわたしは、アメリカ人ボスに話し、日本にいる元上司や同僚にがんがんメールを送った。けっこうな情報を集めた結果、わたしは会社の「女性活用」施策のせいでこんな目に遭わされたということがわかってたのだ。顛末はおそらくこんな感じだ。

(1) ある支社が新しい部署を立ち上げようとしている
(2) これは、支社トップの鳴り物入りのグローバルプロジェクト。うまくいったらすごいけど、地雷だと思われている
(3) 自分の手は汚したくないけど、うまく行ったときのために恩を売っておきたいなーと思う人多数
(4) 最近「女性活用しろ」って言われてるから、立ち上げついでにメンバーを女性中心にしよう
(5) プロジェクトリーダーは、英語ができる女の子を引っ張ってきたけど、その人は営業で、技術者じゃない
(6) リーダーを助ける人を探すべく、英語ができる技術者いない?と社内で募集をかけるも、めぼしい人材見つからず(=そんな人は、地雷プロジェクトに行きたくない)
(7) 「支社に異動できる」+「女」+「英語」+「技術」な奴いない?と支社トップがえらい人に捜索願い
(8) 「おっ、これは恩を売れそうじゃん」と人質を差し出す奴発見!

もうつっこみどころが満載すぎて、どこからつっこんでいいかわからない。なんか書いててこんなところで働いているのか…と悲しくなってくる。

もちろん、会社の一員としてはこのプロジェクトがうまくいってほしい。だけど、じゃあわたしがこのプロジェクトのために、単身赴任を考えたり、夫を扶養家族にしたいかと言われたら絶対にNOだ。というのも、

・ギャンブルの掛け金にされるほど、今の上司に恩義はない
・対価がない(別にお給料が上がったり、昇進するわけでもない)
・わたしは技術系だけど、その分野の経験はない
・今の仕事とも連続性がない、これまでの経験が使えない
・単身赴任なんかしたら、ますます妊娠の可能性が下がる
こんな仕打ちを受けて、生まれて初めて、あんまり眠れないし、食欲もないという日が続いた…わけではなかった。というのも、この状況を知った現在のボスや、東京の元上司たちが、いっせいに怒ってくれて、一瞬で支社行きの芽をつぶしてくれたからである。

社内のシステム上に入っているスペックを見て、ひとことも本人と話さずに「アメリカにいる理系女子」というなんとなくの経歴だけで見定めた人たちに対し、ボスたちは、わたしの悩みや考えを聞いてくれて、一緒に仕事をした経験も踏まえて、代わりとなる次のステップを用意してくれたのだった。これについては感動を禁じえない。(でもさすがに初日は、「こんなことする人がいるんだ…」というのに衝撃を受けすぎて、眠れなかったし食べれなかった…) 


…さすがにちょっと詳しく書きすぎた気もして怖いのだが、言いたいことは、

自分の評価のために、「女性活用」を利用するな。

ともあれ、プロジェクトの成功を東京からお祈りしております。

2015-12-16

選択型夫婦別姓への道が遠くて悲しい

悲しすぎて筆ならぬキーボードをとりました。

夫婦別姓認めない規定 合憲判断も5人が反対意見(NHKニュース)

女性裁判官は全員が「違憲」意見 夫婦同姓の合憲判決(朝日新聞)


違憲判断(+損害賠償)は難しいだろうとは思っていたけど、15人の裁判官のうち、実際に改姓のめんどくささを実感したであろう女性が3人しかいないというところに日本社会の縮図を思う。

判決をひかえて、ソーシャルメディアにも「夫婦別姓」の文字が飛び交っていた。わたしは「選択型」だったら別にいいじゃん、というかお願いします!と思っているのだが、それでも反対する人が多いことにびっくり…というか、ほとんど悲しい気持ちになった。反対派のよくある主張にわたしの考えを書いておきたい。



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よくある言い分① 家族の絆が壊れる


苗字が同じということがどの程度家族の絆を保つのに役立っているかというところに大きな疑問がある。苗字が離婚への抑止力になるというのなら、これまで同姓だったけど離婚する人が3割いるのはどう説明をつけるんだろう…

そもそも、結婚した時点で離婚はしたくないものだし、それでも離婚に至るにはやっぱりいろんな問題があると思うので、それに対する苗字の因果関係はどうしても見出せないのだった。


よくある言い分② 同じ姓にしたくないなら結婚するな


この主張はとっても新鮮だったし、そういう観点で結婚を捉えたことがなかったのでけっこう考えさせられた。わたしは「この人と一緒に生活するためには結婚という手段が一番合理的」という理由で結婚した。同じ苗字になるのは本当に余計な必須事項なんですが…

これは「結婚=同じ姓を名乗らなければいけない」という決まりに疑問を持たない、とっても優等生的な主張だと思う。


よくある言い分③ 子供の名前はどうするの?きょうだいで名前が違うの、混乱するでしょ


子供がいないわたしが言ってもまったく説得力がないが、社会に夫婦別姓、子供ごとに苗字が違うという状況が広がったら、大した問題じゃなくなるんじゃないかなと思う。大人は事情がよくわかっているし、子供には「両親には生まれたときの苗字があって、それをそのまま使っているだけなんだよ。あなたの苗字はどちらからとったんだよ」と説明すればいいだけのような気がする。その上で、子供がどちらかの苗字にしたいという自覚が芽生えたら、変えられるような制度にしておけばいいんじゃないかなと。

あるときTwitterで、旧姓で仕事をしているという女性が、「子供への影響はないんですか?」と同じく結婚されていて子供がいる女性に質問されていた。その方はおそらく5歳くらいのお嬢さんがいらっしゃるのだが、「子供にはお母さんには結婚前の名前があって、それを仕事で使っていると説明してます。子供もうっすらわかってるみたい」と答えられていた。


よくある言い分④ 一部の人が必要としている制度のために、法律を変える必要なんてあるの?


これも新鮮だった。先進国はマイノリティを受け入れて発展していくものだと思い込んでいたからだ。利便性(?)や多数派の主義主張のために(?なのかな、よくわからない)、マイノリティを切り捨てていい、ってそれこそ憲法で定められている基本的人権の尊重はどうなんだ(今回合憲って言われてたけどね!)。

あと、「法律を変えるのは大変だから、通称でも通る世間を作るのが先決」という意見もきたのだが、これは鶏と卵だと思う。そんな世間を作るのにはやっぱり法律が変わってくれないとめんどくさい、というのが苗字を変えなきゃいけないという社会的圧力の下に置かれることが多い、いち女性の意見である。


よくある言い分⑤ 名前だけで仕事してるのか?それこそ周囲に説明すればいいじゃん


以前、「結婚して名前が変わったと言ったら、まわりはみんな祝福してくれた。不便を感じません。だから夫婦別姓はいらない」というある女性政治家の主張を見たとき、絶望を覚えた。いや、結婚した、って報告したらふつう祝福するでしょう…

もちろんできる範囲の周囲には説明している、というか、通称は旧姓だけど、公的書類は新姓です、とあらゆる場面で説明せざるを得ない。が、結婚したときはいいけど、不幸にも離婚することになったらまたもや説明しないといけない。そのとき自分がいやな思いをするのはもちろん、周囲の人だって、ちょっと申し訳ない気分になるんじゃないだろうか。離婚に至るまでの決断は当人にはつらいものだし、それを無神経にほじくり返すようなことするの、気まずい。

ここで、「離婚を前提にするなんて家族の絆を考えてなくてけしからん」という声が聞こえてきましたが、上にも書いたとおり、離婚したくて結婚する人なんていないし、離婚には相応の理由がある。そのときのダメージを減らすように法整備をすることは意味があることなんじゃないだろうか。(そもそも結婚でももろもろの事務処理とかのダメージがあるわけだが…)


よくある言い分⑥ 本人確認に支障が出る。犯罪捜査とかどうするの?


マイナンバー&戸籍謄本があるじゃないですかー☆ 苗字が同じだからというのは確かに一定の歯止めにはなるけど、現状でもサトウとかスズキとかたくさんいる苗字の場合はどうなんだ、という気がしないでもない。あと犯罪捜査については、日本の警察と最新の科学捜査はそんなにザルじゃないと信じている。

ちなみにわたし、パスポートは旧姓表記をしていて基本的に日常では旧姓を使っているんだけど、日系の飛行機に乗ると、隣に座っている夫と予約時の苗字が違うので、「ご一緒じゃないですよね?」とよく言われる。これ自体は大したことではないけど、こういう「思い込み」も、「別姓の夫婦がいる」という認識が広がればなくなっていくと思う。


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結婚して相手の名前になることに幸せを覚える人がいるのも確かだし、そういう人はそういう道をこれからも選べばいいと思う。だからこそ「選択できるようにしよう!」と言っているわけである。

最高裁は「国会で議論してね」と言ったわけだけど、今の超保守な国会じゃ無理だろうな…と未来を悲観してしまう。しかし、「保守」って、過去を守って、未来はどうするつもりなんだろうね。いつも疑問だ。

渋谷区あたりが「夫婦別姓証明書」を出してくれたりしないかな、と希望の光をむりやり見出して生きていきたい。



追記1:
友人のアメリカ人、カナダ人女子にこのニュースを送ったら、
「はあ?なんで?」
「(アメリカ人女子がこの記事を見つけて)保守派が家族の絆が壊れるって言ってるらしいよ…」
とドン引きされました。

追記2:
さらにこのニュースを見かけた友人のスペイン人女子からは「大丈夫!将来はきっとよくなるから元気出して!」となぐさめられました。スペインの双方の苗字をくっつけて使う方式いいよなあ。あれもお父さん方のやつが残っていくシステムだけど、まったく消えちゃうよりずっとましよねえ。

2015-05-03

「若者の○○離れ」アメリカ版を集めてみよう(随時更新)

アメリカのニュースを見ていると、ミレニアル世代(またはミレニアルズ)についての記事が多い。最近日本のメディアにもちょいちょい出てくるこの言葉、1980年から2000年くらいに生まれた層のことで、アメリカでは人数が多く、ITリテラシーも高いので注目されている。

ということで、この人たちを「若者」ということにして、アメリカ版「若者の○○離れ」を集めてみようと思う。おそらくデータは今後もいろいろ出て行くので、随時更新という形にしたい。ではスタート。

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  • 家
  • 車
  • テレビ
  • 高級バッグ
う…最初の記事でこのエントリーが終わってしまいそうじゃないか!このラインナップ、日本と似ているんじゃないだろうか。
先日も紹介したこちらの記事にも「車はいらない。地下鉄で通うから」というミレニアル世代の話が出てくる。心から同意する。どうでもいいが、こっちで車を買ったと東京の友達に話したら「どんなセレブな生活してるの!?」と驚かれた。日本の若者にとって車ってそういう存在なのかーと考えさせられるできごとだった。
テレビについては、「TVはいらない、インターネットだけでいいよー」という若者が多いようである。コンテンツはネットフリックスやらYoutubeやらでいくらでも見られるからなあ。
8 things millennials want—and don’t want—show how different they are from their parents(Washington Post)


  • マクドナルド
ミレニアル世代はヘルシーな食事が好きというのもよく言われること。マクドナルドがうまくいっていないのは日本だけではないようだ。じゃあマックじゃなくてどこへ?と思ったらChipotle(メキシカン)とかFive Guys(ハンバーガー)といった「ファーストカジュアルレストラン」に流れているとのことである。う、うーん…わたし的にはどっちもあんまり変わらないの気がするんだけど…ともあれ、モスバーガー!進出するなら今ですよ!
McDonald's Faces 'Millennial' Challenge(Wall Street Journal)
※追記
このニュース、アメリカ人のミレニアルな友人に、「マックもファイブガイズも大して変わらないじゃーん」と言ったら、「全然違うよ!ファイブガイズとかの方がゆっくり食べられるし、ヘルシー」と返ってきた。和食ラブなわたしは、この国の「ヘルシー」の定義をまず変える必要があるんじゃないかと心から思った。


  • ソーダ飲料
おおおお、じゃあこんどこそヘルシーなものを飲むの?おーいお茶とか?…と思って読んでみたら、ソーダではなくてエナジードリンクを飲むとか…うーん、ヘルシーではない気がするぞ。でもって、たまにしかソーダ飲料を飲まないものだから、ダイエットコーラとかの売上も落ちてるらしい。「たまに飲むならダイエットじゃなくていいかー」というのと、人工甘味料があまりよろしくないという意識が広がっているからだそうだ。
Are Carbonated Soda's Doomed?(Motley Fool)


  • 出産
2007年から2012年の間に、20代の女性の出産は15%も減ったとのこと。これはキャリアを築きたいという気持ちよりも収入が増えないことが原因だとされている。なんだかどこかで聞いたことがある話だ。
Millennial Childbearing and the Recession(Urban Institute)

  • 子育て
生まれていないので、当然子育てからも離れている。
Why parenting is even more daunting for millennials than it was for their parents — or their grandparents(Washington Post)

  • 宗教
価値観の多様化で宗教を必要としない若者が増えていて、それによって共和党の支持層もゆらいでいる…という話である。ということで…
Godless millennials could end the political power of the religious right(Guardian)

  • 共和党
民主党(というかオバマ政権?)の支持層は若者が中心と言われている。先日、「日本の若者は保守化している」という意見を聞いたんだけど、実際のところどうなんだろう?
A Deep Dive Into Party Affiliation -Sharp Differences by Race, Gender, Generation, Education(Pew Research Center)

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このミレニアル世代、わたしの感覚では日本とアメリカであまり大差ないような気がする。いつの世代も若者は文句を言われる側だけど、日本だとこの世代は「若者の○○離れ」だけでなく、「ゆとり」やら「草食系」やら、本当に虐げられているような気がする。消費者としても魅力的だし、これからの社会に大きな影響を与えるこの世代に注目すべきだというアメリカでの見られ方は、お金もうけを狙っているのもあるだろうがとても素直で公平だなあとも思う。

ということで、今後も見つけ次第随時更新していきます!


(追記 2015/5/22)

  • 野球をはじめとするスポーツ全体
「単なるファン、あるいは単なる運動よりも成績が強調される風潮が強まっているため、早い段階からひとつのスポーツに打ち込む子どもが多くなり、あらゆるスポーツで気軽に参加することが困難になってきた。」って、なんだか子供も大変なんだなあ…と思わされる。
米国でも進む野球離れ、MLBの将来に不安も(Wall Street Journal)


2015-02-20

同僚がすばらしくて自慢せざるを得ない

アメリカに引っ越して3回目の冬である。
…寒い。ニューヨークからちょっと南に引っ越したのに、相変わらず寒い。マイナス15度とかざらなんですが!さらさらした雪は雪合戦には向かない。

寒さにはへこたれそうだが、仕事に行きたくないなーと思うことはない。揺れまくって8割の確率で酔う地下鉄には辟易するが、オフィスに着いたときには「今日も仕事するぞー!」という気持ちで、心が踊る。長い社会人生活でこんなことはあまりなかったので、その理由を考えてみたのだが、ひとえに上司や同僚がみんなすばらしく、働きやすいからなのだった。あまりにすばらしいので、今日はそのすばらしさを言葉にしてみよう。

◆◆◆◆ 突然開催!同僚自慢のコーナー ◆◆◆◆

(1)みんなプロフェッショナル
わたしの上司や同僚は、みんなある分野の専門家だ。
日々の研鑽を怠らず、必要とされるものをきちんとした質を保ちながらアウトプットしていく姿は、これまで付け焼き刃でその場しのぎ的なことばかりしてきたわたしには非常に勉強になる。
日々の研鑽というのは本当に細かいことの積み重ねで、例えば日々最新情報を集めて理解し、そこから将来の動きを予測するという行動である。「アンテナを高くしてうんぬん」とか、口では簡単に言えるけど、毎日出てくる新しいものを自分の知識とつきあわせてじっくり考えるのはなかなかできないことだ。本番へのウォーミングアップを毎日欠かさないと言えば伝わりやすいだろうか。

(2)お互いを尊重し、率直な議論ができる
「この分野はあの人の専門」というものがあると、組織の上司と部下という関係を超えて、もちつもたれつ専門分野で助け合いながら、お互いを尊重しあうようになる。自分の存在を誇示するために、上司ぶるとか、こびを売るとか、そういう間違った方向の努力をしなくてもいい。
お互いを尊重しているということがわかっているので、率直な議論ができるというのが本当に助かる。上司の顔色をうかがって、びくびく何を言うか思い悩むのとは、生産性がぜんぜん違う。わたしの上司はいつでも、「自分はこう考えてるんだけど、どう思う?」と意見を引き出そうとしてくれるし、わたしの意見が自分の考えと違うときこそ、意味があると言って感謝してくれる。わたしの英語での下手な説明をじっくり聞いてくれる点も含め、非常にできた人である…

(3)仕事が早くて、早く帰れるから元気
普段から入念なウォーミングアップ…というか準備をしているので、仕事を片付けるのがめちゃくちゃ早い。さらに率直に議論ができるので、無駄な資料を作ったり、説明をしたり、という時間が大幅に削減できていると思う。
仕事が早いので、おうちにも早く帰れるからか、みんな基本的に元気である。元気だから次の日も朝からばっちり働けるし、仕事が早く終わらせられる。お休みもきちんと取れる。これを好循環と呼ばず、なんと呼ぶのだ!ってかんじ。

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ああ、なんてすばらしい環境なんだ!書いてみて、改めてうっとり。

まったく正反対の、
(1)みんながやっつけ仕事
(2)上司が高圧的で意思疎通ができない
(3)みんな長時間働いてる、夜中でもお休みでも仕事は当たり前
というような職場で働いていた経験があるので…うっうっ。本当に、今の環境が天国のようだ。

ただ、わたしの職場のような場所は、いろいろな条件が揃わないと実現できないような気もする。ぜんぜんひねりがないけど、ひとことで言えば「人を一番大事にする」という点じゃないかなあ、とだいぶ前の友人のブログを読んで思ったのであった。

知識労働時代の資本(カネ)の使い方(Casual Startup - MBA/プログラマの起業日記)
さて、知識集約産業では、従業員の持つ知識・知恵がもっとも重要なので、資本は知識を持った従業員を定着させ、より効率的に知恵を出してもらうために使うべきです。
今現在こういう職場にいるわたしは、この主張に本当に心から同意する。

2015-01-21

海外駐在凍結か卵子凍結か、それは選択肢の問題だ

時事ネタというほどでもないけれど、ある日の記事が目に留まった。


三菱商事、育児中の在宅勤務導入 女性社員の支援拡充 (日経新聞)

 三菱商事は4月から、仕事と子育ての両立をめざす女性社員を支援する制度を拡充する。在宅勤務制度を試験導入し、海外駐在のタイミングなどにも配慮する。同社は2006年から採用を増やした女性社員が結婚や出産の時期を迎え始めている。支援体制を整え女性の管理職登用などにつなげる。
 三菱商事の女性社員比率は約25%。4月から取得時間などに上限のある在宅勤務制度を導入する。保護者会や授業参観などの行事に使える年3日間の「学校休暇(仮称)」を設けるほか、小学生を対象とした学童保育を実施する。外部の保育サービスを活用し、夏休みなど学校の長期休暇に社員の子供を預かる。  
 出産や育児がキャリア形成に影響しないよう、海外駐在の仕組みも見直す。子育てのタイミングを考慮し、女性社員の30歳前後の海外研修などを極力避ける「女性社員ファストキャリア」の導入などを検討している。
 三菱商事は20年までに現在7.1%の女性管理職比率を10%以上にする目標を掲げる。11年からは一般職の採用も再開しており、「家庭と仕事を両立して長期で活躍してもらうことは重要」(三菱商事)として環境づくりを急ぐ。大手商社は女性管理職の割合が低く他業界に比べ女性活用で出遅れているとされる。


どこか誇らしげに掲載されたこの記事、なんとなーく違和感を覚えていたのだが、その理由がわかった。同じような問題を扱っていながらも、まったく違う対応をしているこちらの記事をちょっと前に読んだからである。


FacebookとApple、女性社員の卵子凍結費用を負担(テッククランチ)

 FacebookとAppleは女性従業員が出産を先に延ばし、キャリア形成に専念しやすくしようとしている。両社は卵子凍結の費用を負担する。(中略)
 手続きには最大1万ドル費用と毎年500ドルの保管料がかかる。Facebookは既に、卵子凍結のために最大2万ドルの特典を全女性従業員に提供しており、Appleも来年1月から、費用負担を開始する予定だ。
 卵子凍結は、Appleが女性向けに提供している唯一の特典ではない。「われわれは、継続的に女性のための福祉を拡大している。育児休暇の延長、および不妊治療の一環としての卵子の凍結保存はその一部だ。当社では養子補助プログラムも提供しており、法に基づく養子縁組に係わる費用をAppleが補償する。Appleで働く女性が自分の人生のために最高の仕事をしつつ、最愛の家族を気にかけ、育てていける環境を作りたいと考えている」とApple広報担当者はメールで発表した。(中略)
 30代の女性は、卵子凍結によって出産を延期できる可能性によって「力を得た」と感じることが、2013年に”Fertility and Sterility” に掲載された調査で報告されている。同じ調査で5人に1人が、職場の柔軟性のなさが、出産を遅らせる要因だと回答している。(後略)

わたしには、同じような問題に対して、正反対のことをやっているように見えたのだった。

この取り組みの比較だが、どちらがいいとか悪いとかいう問題ではない。たとえば、「私は仕事そんなにやりたくないし、海外転勤を制限してもらえるのはうれしいわあー」っていう人もいるだろうし、「卵子凍結とか自然の摂理に反する!」って考える人もいるだろう。「卵子凍結させて、むちゃくちゃ働かせるんでしょう?」という不安もわかる。そしてたぶん実際そうなのだが、日本の企業と比べたらどうかはよくわからない…ただアメリカ人の友達と話していると、「もう日系企業はナシだよね…」という話によくなる、とだけ書いておきます。

わたしは、どのような選択肢であっても、選択肢が増えることは望ましいんじゃないかと思うのである。だって、わたしは海外駐在ストップされたらいい迷惑だと思うけど、その時期は妊活に専念したいって人もいるだろうし。卵子凍結に抵抗があっても、誰かは使いたいかもしれないし。どっちも余計なことしてくれるな!っていう人だっているだろうし。

しかしだ、三菱商事の取り組みは、なんで「女性」だけなんだろう?
例えば、子供ができた男性の側が、配偶者の都合に合わせて休める制度とか、そういう配慮はないんだろか。三菱商事の男性と結婚した女性は、社内外問わず、自分のキャリアを捨てて出産・子育てに専念しろということなのだろうか…そのうち、「待遇から見る理想の結婚相手 年収編、子育て編」なんてランキングが作られそうである。もうあるかも?

そう、夫婦別姓もわたしにとっては同じ問題だ。
だから「選択制」夫婦別姓に異論を唱える人の理屈は本当にわからんのだ。選択肢が増えるだけの問題で、あなたは選択しないかもしれないけど、選択したい人だっている。わたしのように。よく言われる子供がどうする、っていう問題だって、どうにでもなると思ってしまうのだが…。

おっと、「子供がいたら名字なんて、どうでもよくなるのよー☆」という、子なしには反撃できない鋭い一撃がどこかから聞こえてきたような気がするので、今日はこの辺で退散する。

2015-01-17

アメリカに引っ越して2年が過ぎた

いまさらクリスマスツリーの写真ですみません。

昨年の今頃、「おお、もうニューヨークに来て1年かー」と思っていたのだが、気がついたらそこからまた1年経っていた。
しかもまさかアメリカ国内で引っ越しをすることになるとは思っていなかった。けど、今のところ新しい仕事は楽しいし、同僚はみんないい人たちだし、勉強になることばっかりでいい経験をしているなあと思う。

年が明けたので新年の抱負を考えようとして、ふと気づいた。あれ、2014年の抱負って何かあったっけ…?
…あった。ばっちりブログに書いてた…。完璧に忘却の彼方だったので、全部「ああ、こんなこと書いてたのね」という感じである。せっかくなので評価してみようと思う。

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【2014年の抱負】
(1)わからないことを流さない
これはけっこうできたかもしれない。というのも、仕事が変わったので、これまでの知識が使えないことがたくさん出てきた上に、同僚たちがそれをばっちりサポートしてくれる姿勢だったからだ。(って、相変わらずこういうところは受け身ですねわたし…)

(2)いつでもユーモアを忘れない
あんまりできませんでした…どうしても納得できないことは、ばっさばっさ切り捨ててしまったよ…。もうちょっとこう、皮肉のきいたかんじでじわじわダメージを与えながら要求を通す技とか覚えたい。
むむ、この技、何かに似ている。あっ、隠れながら進むスキルが要求されるアサシンクリードだ!…アサシンクリード、開始1時間で無理だと思って投げ出しちゃったよ。ばっさばっさ敵を倒すRPGは好きなんだけどなーーーー。

(3)「めんどくさい」ことを避けない
たいてい避けずに行けたと思うけど、やっぱり正面切ってやりすぎた感は否めない。もうちょっとうまく避ける方法を…やはりアサシンクリードスキルを…

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ということで、2015年も懲りずに抱負を考えてみよう!

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【2015年の抱負】
(1)自分で勝手にあきらめない
何かをやろうとしたときに「ああ、わたしには無理だろうなあ」とやる前からあきらめてしまうことがある。そもそも何かを試すことや実験が大好きなので、興味がわいたものはとりあえずやってみようと思う。ああ、アサシンクリードも…?

(2)めんどくさいことを先延ばししない、でもあんまり計画的になりすぎない
めんどくさいことを先延ばししないというのは引き続きなんだけど、がちがちに計画されたものってなんだかつまんない。
具体的に先延ばしにしないことは、友達に連絡を取ることや、アメリカで病院に行くこと。内臓とか病気とかの英語まじでわかんなくてめんどくさいよーーー。超がつくくらい健康体なので、日本でもめったに病院に行かないのだ…
あと計画的になりすぎない、というのは週末や旅行の予定とか。突然持ち上がったことにも柔軟に対応したい。夫がめちゃくちゃフレキシブルで、いつもにこにこしているような人なので、ちょっと真似したい。しかし、日本の友達はみんな忙しいのできちんと計画しよう…

(3)節約を経験より優先させない
先日のこの日経のアンケートを見て、ちょっと考えさせられたのだ。


1位が貯金って!そりゃ景気良くならないわ!
もちろん貯金が大事っていうのはわかる。備えあれば憂いなしっていうのも。実は以前、あまりにもお金が貯まらないので「貯金最優先!」みたいな生活を送ってみたのだが、自分や年金システムの将来を憂いながら、貯金の金額を気にしてケチケチするのってあんまり楽しくない。「生きるためならなんでもできるよねー」という気持ちで生きていくほうが楽しい。
たとえばおいしいものを食べるとか、見たことない景色を見るとか、ストレスなく旅行をするとか、そういうところには惜しみなくお金を使おうと思う。今の経験がたぶん未来のわたしを形作るのだ。この考え方、「なんでもお金で解決!」のアメリカに毒されている気がしないでもないが、今年は試してみようかなー。
ちなみにわたしだったら20歳のわたしに、「そのまま好きなことやれ!」というアドバイスを送る。つまり今の自分にそれなりに満足しているようである。

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ところで、先日日本へ帰ったとき、複数の友人から、余った妊娠検査薬※や、婦人科系の病気に効くっていうハーブティーやらをもらった。
※妊娠検査薬は2本入りのことが多く、1本目で妊娠が判明した人が、残った1本を、妊娠を希望している人にあげる、というのが日本の女子界のげん担ぎ的儀式だそうだ。
…………………………
そういう方向で激しく心配されているんだろうなあと思う次第である。ほんと少子化・赤字大国日本に貢献せず、納税もせず、生きててすみません。…基本的人権の尊重ばんざーい!

2014-09-13

ハウスワイフ2.0よりオールワーカー2.0じゃない?

ある日の友人たちとのLINEのやりとりがものすごく切実で胸が痛んだので、これはインターネットの片隅に残しておきたいと思ってキーボードをぺこぺこ叩いている。
彼女たちは東京の企業で働いているのだが、それぞれ1歳弱から2歳くらいの子供がいて、出産後に産休と少しの育休を取ったあと、会社に復帰した。それぞれ1日4時間から5時間の時間短縮勤務、いわゆる「時短」をしている。

彼女たちの悩みは、ひとえに、残業大国日本において、時短で働くことに起因している。具体的にはこんなかんじだ。
「フルタイムのときのクオリティは物理的に絶対無理なのに、周囲の期待値はフルタイムの時と同じ」
「フルタイムのときの100%の出来を自分でも求めて、私の仕事はこんなじゃない!と思ってしまう」
友達のことをほめちぎるのもなんだが、彼女たちはみんな仕事への意欲があって、職場でも高く評価されている。そんな彼女たちが「時間的制約のせいで、思い通りに仕事ができない」と悔しがるのはよく考えてみれば自然の摂理だった。
子供が生まれたばかりの頃は「かわいいし、仕事したくない」とか言ってたが、根がまじめだし働くことが好きだから、いざ会社での仕事に復帰してみると「時短だし、適当でいいでしょ〜」なんて割り切ることができないくらい、彼女たちは仕事にも育児にも熱心なのだ。
よく、「時短の人は周りを頼りましょう!自分がいなくても仕事が回る体制を作りましょう」とか言うが、その辺についてもうまくいかせるのが難しいみたいだ。
「働く時間が短くて、忙しい周りの人と顔を合わす時間も限られるから、タイムリーに相談できない。さらに相談すらできない自分がふがいない」
「いない間のキャッチアップで午前が終わる。こっちの仕事の状況を話す暇も、向こうの状況も聞く間もなく、打ち合わせが始まる」
「メールが見切れない」
「限界まで自分でやろうとしてしまって、最終的に周りが見かねて助けてくれるんだけど、最初からお願いしておけば相手も楽だったんじゃと落ち込む」
うわー、話す時間がなくて、メールも見切れないって、有効な情報共有手段がない。さらに、時短だからこそ、できるところまではやらなければと思ってしまうのだろう。「甘えるの難しい。女子力低いし、いままで甘える人間の真逆のポジションにいた…」という友人の言葉には、みんな画面の前で「たしかに」とうなずいた。(と思う)

フルタイムのときのクオリティは無理、というのはどうだろうか。時間が短くても、なんとか品質を上げることはなんとかできるんじゃないだろうか…?という希望的観測も、ばっちり撃ち落とされた。
「考える仕事のアウトプットが出せない。アウトプットに一番満足していないのは自分自身」
わたしは、「身体を動かす仕事はフルタイム時代と同等のことができないかもしれないけど、考えることならできるんじゃないかなあ」と勝手に思っていた。
しかし、例えばわたしの場合、考えるためには正しい情報に基づく状況の把握と、その上での持論が必要だ。持論を導くためにいろんな情報を集めて考える結果を出して表現することには時間がかかる。その情報収集や理解には自分で考えているより時間がかかるし、体力も使うものなのかもしれない、と気づかされた。
「絶対にフルタイムだったときの自分には到達できないからいろんなテクニックが必要」
と友人たちは気づきを述べる。まったくその通りだ。今までと同じように資料を探して、読んで、考えて…というやり方を変えなければいけない。でもどうすればいいんだろう?という悩みの渦中に彼女たちはいる。
よく言われているフレックスとか、家でも仕事をできるようにする、という案を思いついたのだが、夜11時にもメールが来ていた自分の生活を思い返し、乳飲み子を抱えながらそんな生活は無理だろうと思い…っていうかそういう生活、誰がしていてもやっぱりおかしい。
「残業大国、男性天国の会社においてくじけそう」
「分速での仕事量は相当のはずなのに…」
男性社会、長時間労働がほめそやされる場所でくじけそうになるのはものすごくわかる。
こんな彼女たちの悩みを聞いて、わたしは、
「みんなががんばることに価値があって、がんばることで後の世代とか、子供の世代が生きやすくなるんだよ」
としか言えないのであった。


しかーし。そんな「がんばっていた母親」を反面教師にして、ちょっと貧乏でもいいからオーガニックで手作りの生活をしようとするのが、アメリカでちょっと前から話題の「ハウスワイフ2.0」である。

ハウスワイフ2.0(エミリー・マッチャー)

ウーマンリブ運動の影響を強く受けたハウスワイフ2.0たちの母親世代は、ばりばりと仕事をこなし、「家事はお金で解決」という姿勢だった。アメリカに来てみて驚いたことのひとつに、冷凍食品や保存食品のコーナーが異様に広いことが挙げられるのだが、あの大きな冷凍食品の棚にはこの時代背景も影響しているのだろう。家事なんかダサイ、みたいな風潮があったみたいだ。

母親は「働くのが当たり前だから、就職に苦労しないように」と教育に力を入れて、いい大学に進ませるのだが、そんな母親の背中を見て育った娘たちは、「お母さんはいつも忙しそうだし、ご飯はおいしくないし(想像)、こんな生活って本当に幸せなのかなあ?」と疑問を感じてしまう。

不況も手伝って、せっかくがんばって勉強したのに専門性を活かせない、やりがいのない仕事にしか就けない。家庭を持ちたいけど長時間労働だし子供を預けたらめちゃくちゃお金がかかるし夕飯は毎日冷えたピザだし(想像)……ああああ、もうめんどくさい!!!仕事やめて家に入る!!!

外で働いてないけど家で野菜とか鶏とか(!)豚とか(!!)育ててるし、ほとんど自給自足。だってスーパーで売ってるものなんて、どう育てられたかわからなくて怖い。冷凍食品なんてもってのほか、ほら、焼きたてのキッシュっておいしいでしょ?学校なんてどんなモンスターペアレントがいるかわからないし、できない子に合わせられちゃうから、子供には私が家で勉強を教えてあげるの。手芸品は白っぽい写真を撮ってEtsyで売ろう。空き時間には素敵ライフをブログで発信。あ、またコメントついてる。ああ、忙しいなあー。

……
…というのが、わたしから見たハウスワイフ2.0である。ちょっととげがあるように見えたらごめんなさい。
「食べ物はおろか、子供の教育ですら他人にはまかせられない!」という意識の高いハウスワイフ2.0たちの生活だが、田舎大好きでぐうたらしているわたしなのに、「豊かな生活でいいなあ」とは思えない。
なんだか「社会が信じられないから自分が!」というところに、鼻息の荒さと世捨て人感とストイックさと自分勝手さと自己顕示欲が透けて見えて、最終的には「家に遊びに行くとき、どんなおみやげ持ってけばいいかわからん…」という状態になるからである。ハウスワイフ2.0の前では、オサレオーガニックスーパーWhole Foodsですらだめ出しされるんだろなあ。外食もできなそうだ。

本の中でも、ハウスワイフ2.0たちが求める社会というものは、家の中にいるだけでは絶対に訪れないと書かれていて、心から同意した。
家庭の変化は大切だけれど、すべての変化が家庭の中だけで終わってしまってはもったいない。(中略) 女性が外で働くのをあきらめてしまったら、会社がいまと何も変わらず、職場での女性の発言権もなくなってしまう。わたしたちは、職場に踏みとどまって、男性と同じ給料や、適切な産休や、人間らしい勤務時間を手にいれなければならない。男性のために働くなんて馬鹿馬鹿しいと、仕事を辞めてしまったら、会社も社会も改善されないままだ。
ああ、本を読み始めたとき、友人たちに仕事もがんばれ!と言ったばっかりにその子供たちが働くのめんどい、と思ったらどうしようとか思ったけど、こういう結論になっていて本当によかった…とひそかに胸を撫で下ろしたのであった。

一方でこの本は、自立と人を頼るバランスがうまいなあ、と思ったし、社会への貢献といった面も言及されているので、悩んでいる友人たちにプレゼントしたいなあと思った。

 

著者の会社は育児や介護等、さまざまな事情を抱える社員がこれから増える中、残業を減らしても売上を維持もしくはアップさせることは可能だとしてコンサルティングを提供しているのだが、そんな著者から見て、日本社会はちょっとずつ変わってきているという。
もしかしたら皆さんは、「でもやっぱり、うちの会社は変わらない……。こういう環境で頑張り続けることに疲れてしまった」と思うこともあるかもしれません。でも、日本社会は今、確実に変わってきているのです。(中略) 創業して約8年たつのですが、弊社から営業の電話をしたことは一度もありません。900社のクライアントはすべて先方からの問い合わせで受注しました。とても強い危機感を持って、経営者自ら「うちの働き方を変えないと!」とご依頼いただく時代になったのです。(中略) 現在コンサルを提供している企業は、陸海空の運送、自動車部品、重電、製薬、エネルギー、ソフトウェア、食品、住宅、そして不夜城といわれた中央省庁など、多岐にわたります。変わらない業界なんてないと思います。
ここまで書いてみて、結局日本もアメリカも、父親や社会制度を始めとする一緒に子供を育てる人だけでなく、職場や同僚の協力はとても重要であるということを再確認した。
前出の友人のひとりは、「同僚と今の仕事がわかるようにExcelで共有するようにした」と言っていたが、なかなかいい第一歩だと思う。こういう、「みんなで協力しよう!」というのはアメリカよりも日本の風土の方が受け入れられやすいと思う。
道を拓くのは女性だけの努力じゃない。周りにいるすべての人の協力や、社会制度だと思う。ということで、ハウスワイフ2.0じゃなくて、オールワーカー2.0じゃない?と思ったのだった。

世の中の母のみなさん、自分で背負いすぎなくていいんだよ。あなたたちの苦労や努力は、確実に社会を変えています!


◆関連過去記事
ネイティブ女子との会話から考えるアメリカの少子化(の予感)
この会話の中に出て来る友人アメリカ人女子たちと比べると、ハウスワイフ2.0たちは、「外で働くことからは逃げるけど、社会からほめられそうなことをして、自分の選択を正当化している」だけのようにも見えるんだよなあ…

2014-06-28

やっぱり日本の地方都市最高

黒川温泉へ行ってみた!
ひとことで言うと、本当に行ってみてよかった。なかなか行きづらい場所にあるのだが、それを逆手に取ったとも言える秘境っぽさやこじんまりとした小ぎれいな町並みも相まって、「これはわざわざ来る価値があるなあ」と思わされる。

顔湯。温泉の湯気がもくもく出てくる。もちろんやった。

黒川温泉には入湯手形というのがあって、これを買うといろんな旅館の温泉に入ることができる。
手形は輪切り(?)にされた木に焼き印が押されたもの。上の写真は使用済みの手形が絵馬として神社に奉納されている様子である。見た目もきれいだし、からんからんとぶつかる音も小気味よい。

今回お世話になったのは「のし湯」というお宿。
自然がいっぱいのお庭の中に、露天っぽい家族風呂が何種類もあって楽しい。

お部屋は和室なんだけど、入ってすぐのところにはテレビが見られるソファーがあった。
お部屋のしぶさは昔の文豪がこもって小説執筆してそうでいいかんじ。

この写真だとあまりよくわからないけど、部屋にも石風呂がついていた。
いっぱいお風呂があったので、部屋の石風呂は足湯だけしてみた。なんという贅沢!

このお宿で働いている人には若い人が多いように見受けられた。
受付の人や、配膳をしてくれる人も若い人。中ですれ違う人も若い…というか、同年代。30代中盤くらい。温泉によっては働いている人の高齢化が進んでいる場所もあるので、おもしろいなあと思った。(それはそれでいい味が出てたりするけど)
ひなびた温泉街だった黒川を立て直したのは、若い人たちの力だという話を聞いたことがある。旅館同士で競い合うのではなく、街全体で場所を盛り上げて行こうとする取り組みが機能しているのをひしひしと感じた。
きっと、若い人たちのアイディアや試みを、上の世代の人たちも喜んで取り入れているのだろう。場所としての魅力が増して、働きたいという人が集まって、どんどんその場所が盛り上がっていく。今後、働く人の年齢がどんどん上がっていくという日本で、黒川温泉で起こったことは結構いろんなところで参考にできるのかもしれない。

ところ変わってこちらは本州の田舎。
新しい新幹線ーー!!静かだし、中は清潔だし、揺れもほとんどなくて乗り心地最高。日本のインフラばんざーい!
アメリカの電車は、きいきいうるさいし、「これ脱線するんじゃ…」ってくらい揺れたりする。そんな中で携帯やPCの画面を見ていたらてきめんに酔う。もう!こっちは温室育ちの日本人なのよ!

商店街に昔からあるお茶屋さん。和カフェみたいなことをやっているらしいのでふらりと入ってみた。
お抹茶ときなこがかかった白玉だんごのセットが500円くらいでなかなかおいしかった。
1時間くらいだらだらしていたのだが、田舎にも関わらずひっきりなしにお客さんがやってくる。
やっぱりこのお店も同年代くらいの夫婦が切り盛りしているようで、メニューが昔より多角化していた。その夫婦の親にあたるであろう60代くらいの人は、もっぱらにこにことお手伝いをしていて、お客さんに難しいことを聞かれると、若い夫婦に確認をしていた。

--------

こんな事例を見て、ビジネスや地方活性化の鍵は「若者に任せること」なんじゃないかなあという、しごく単純かつ、ありがちな意見を再確認した。
どんどん平均年齢が高齢化していくのだから、高齢者のニーズをつかむことが大事だ!という話もわかるんだけど、それだとその場所なりビジネスなりに若者が魅力を感じず、結果若者が来なくて新陳代謝ができない。なんだかいびつな日本の政治みたいになってしまいそうだ。若者が仕事と収入を得る機会も奪われてしまうだろうし。

居心地の良い地方都市で露天風呂につかりながら、「高齢化社会の中で『年功序列』は非効率的なやり方なんだろうなあ」と思った次第であった。


◆◆◆
過去関連記事

2014-06-13

父の手料理に見る人の影響力と時代の変わり目(大げさ)

その日の父は、なんだかちょっと違った。
いつも食卓にご飯が並ぶまでパソコンに向かってる仕事をしているくせに、「ご飯の用意しなきゃな」とか言って、配膳を手伝おうとしている。
わたしの夫が遊びにきているからはしゃいでいるのかなーと眺めていたら、母から衝撃発言。

「お父さんの作ったお味噌汁、食べてね」

!!!!????
お父さんの!?作った!?お味噌汁、だとー!?!?
「はあ!?」
妹が意味不明と訴えんばかりの声をあげた。彼女が声をあげなかったら、わたしが何か言っていたと思う。そのくらい、めずらしい出来事だったのである。

結局、母がほとんど配膳した。
父作のお椀によそわれたお味噌汁は、輪切りにされた若竹と何やら魚のようなものが入っている。
「筍と鯖缶のお味噌汁だって」
聞いたことないメニューを母が説明する。いただきまーすと、おつゆを口に運ぶ。
「ん、これおいしいじゃん」
「わー、おいしいー」
わたしと夫が口々に感想を述べるが、照れくさいのか「うん」とうなずいただけで、父は何も言わない。
「おいしいけどさー…わたし、お父さんの料理って生まれて初めて食べた」
妹が釈然としないような口調で不満を述べると、母が苦笑した。
「昔、お姉ちゃん(わたし)が小さい頃はチャーハンとか作ってくれたりしたよね」
フォローなのかよくわからない母の言葉に、やっぱり父は食べるふりをして無反応だった。
そう、わたしも母も、父の手料理を食べるのは実に20年ぶりくらいだった。
その横で、夫は気を遣ったのか否か、お味噌汁をおかわりしていた。

このできごとについて、「夫と久々に会えて嬉しくて手料理を振る舞ったのかなー?」と考えていたのだが、ちょっと違うような気がしてきた。

わたしはしょっちゅう、夫が作ってくれたおいしいご飯の写真を、母や弟、妹にメッセンジャーで送っている。わたしの夫は家で仕事をしていることもあり、平日ほぼ毎日ご飯を作ってくれるのだ。
そんなある日、弟の奥さんが「作ってもらいました!」と弟作のパスタの写真を家族全員に送ってきた。写真の中のカルボナーラは、なかなかおいしそうだった。
このような状況の中、今回、父の手料理が20年ぶりに登場したのは、
「もしかしてお父さん、わたしの夫や弟のように、自分は仕事だけじゃなくて家事もできるんだよアピールがしたかったんじゃないだろうか!」
と邪推をしてしまう。
そして、そんな父が、素直でいい奴だなー、と思えてきた。

きっかけはみんなに褒められたい、認められたい、という気持ちなのかもしれないが、自分は仕事をしていればいいと言わんばかりの父が母を手伝ったという事実はとても価値のあるものだと思う。
わたしはそんなことを狙って写真を送っていたわけではないけど、わたしの夫や弟がご飯を作るのを見て、父が「家のことは妻に任せて、男子厨房に入らず」みたいな古臭い形から脱皮しかけていると感じたのだ。
思わぬところから影響を受けて、人の考え方や行動が変わっていくのだなあと再確認させられた一件だった。

影響を及ぼす範囲というのは近い友達にとどまらないような気がする。
とても手が届かないような憧れの人だったり、ちょっと名前を知ってるくらいの出身地(学校)が同じ人だったり、ましてやインターネット上で書かれたものを見かけた知らない人だったり。
たぶん、中心から近い部分には大きな波が立つ波紋のように、その人が近ければ近いほど、自分の心に起こる波は大きいだろうけど、思いがけず遠くにも小さな波は届いている。
いいことも、悪いことも、そうやってどんどん伝わっていく。
自分の心に触れるものがあったら、それをじっくり観察してみて、真似したいものは単純に真似してみていいのかもなーと思った。
70歳の頭の固そうな地方在住のおじいさんである、わたしの父でも新しいことができたんだから、誰でも真似することはできそうだ。
そして、こういう影響の伝搬から、常識だったり、時代だったりが少しずつ変わっていくような気もする。
となると、信念に基づいた行動を随時公開することは、意味があるのかもしれない。
このブログも誰かの心に触れて、何かの行動を後押しできればいいなあなんて思った。

あ、今気づいたんだけど、お味噌汁の写真撮り忘れた!
きっと父は弟や義妹に「お父さん作だよ!」と写真を送ってもらいたかったに違いない。ごめんよーーー。
次回作に期待だ!

2014-05-18

元気になれる!女子が主役の推薦図書

今日は女子が主役の元気をもらえる本をいくつか紹介したい。
30歳を過ぎて自分を「女子」というのはちょっと厚かましくて恥ずかしいのだが、今日紹介する本の主人公は10代だったり、やたらエネルギーに溢れているので、これは「女子」と呼んでもいいでしょう!

7SEEDS(田村由美)
少女漫画の部類に入ると思うのだが、男女問わず友達から熱烈におすすめされた本。
ネタバレになってしまうのだが、現在のような形をとどめなくなってしまった日本で、サバイバルをしていく若者を中心とした約40人の話である。
とにかく、女性がたくましい。「虫が嫌い」という彼氏と対比されるやたらたくましい女子高生の花とか、グループを統率する建築家志望の蘭はもうかっこいいとしか言えない。
元警官の牡丹のいう女性はすべての人を見守りながら、サバイバル能力にも長けていて、新しい時代の「聖母」感すら漂わせている。
そんな中、気の弱い女子も、情けなかった男子も、だんだん強くなっていく。そして、一見強そうに見える人々の方も、人との関わりを通して新しい世界で生きることについて考えを深めていく。
人との関わりを通してトラウマや悩みを克服していく姿も心を打たれるし、原始時代のような日本との対比を通して現代社会への鋭い批判もしていて、読み応えのある作品だ。
未完なので、どういう風に終わるのかなあというところが非常に気になる。ちなみに同じ著者の『BASARA』もなかなか胸を焦がしますよーーー!


とりかえ・ばや(さいとうちほ)
時は平安時代、同じ日に生まれた異母姉弟が、自らの信念のままに性別を交換して生きていくことにするという話。
ふたりは社会的な性別を心の性別に合わせるのだが、男女の役割が明確に固定されている社会なので、もちろん苦難に巻き込まれていく。
とにかく話の展開が速く、「ええっ、そんな重大な決断を、あっさりと!」みたいなところもあるが、そのおかげもあってページをめくる手が止まらない。プロの技だ…
男として生きる姉の沙羅双樹の悩みも、女として生きる弟の睡蓮の辛苦も、なぜか現代女性に響いてくるものがある。社会における「男女平等」と「生物としての生殖機能」のバランスを取ろうとする、永遠に解決されなそうな問題がテーマとなっているからだろう。わたし自身、何度男に生まれたいと思ったことか!
現在Kindleでは3冊しか出ていないのだが、早く続きが読みたい。
これまた同じ著者の『子爵ヴァルモン』も気高く、強い女性が出てきてかっこいい。はらはらするけど。


総理の夫(原田マハ)
アラフォー女子(!)が日本初の女性総理大臣になるという話。彼女の夫の日記という形式で綴られた物語である。
作者の原田マハさんも述べている通り(インタビューへのリンク)、非現実的で、夢小説的でもあるのだが、それを補ってあまりある、読んでて気持ちよくなる文章の応酬である。
妻で総理の凛子の政策や、夫の日和の世の中の見方は、わかりやすいくらい現代的でリベラルである。古くさい人たちも、ふたりにつられてだんだん考えを改めていくし、凛子と日和の関係がどんどん強固になっていくところもなごむ。
私、すごく自己中心的な人間だと思う。自分のことばかり、考えてきた。
どうしたら、思うように仕事をすることができるか。どうやったら、誰にも邪魔されず、自分で決めた道を突っ走っていけるか。
とても正直に言うと、あなたは、私が自分の道を脇目もふらずに走っていくのに、ぴったりの伴走者だったのよね。
総理になって、家庭を顧みなくなったことを反省する、凛子のこの言葉にぎくりとした。「伴走」をどう捉えるかは人それぞれだと思うが、「自分の道を脇目もふらずに走って行くのに」というところがひっかかったのだった。
わたしも、夫や周りの人に感謝せずに突っ走ってる感がある。しかも自分の道と呼べるほど高い志を持っているわけでもない。なんとなく探検してみたい未開っぽく見えるところを好奇心のままに無計画に突き進んでいるのだ。みなさんつきあわせてごめんなさい…などと身につまされた本であった。男女同権とは、これまで伝統的に女性がやってきたものをすべて男性に押し付ければ果たされるというものではないのだ。


 
男性論(ヤマザキマリ)
ヤマザキマリさんの新刊キター!
以前も書いた通り、これまでのヤマザキさんの生き方から紡がれるエッセイは本当に面白いし、深いし、かっこいい。(過去記事:『ヤマザキマリさんがかっこいい!』)
帯には「波瀾万丈の男性遍歴」と書いてある。確かに、エキセントリックな詩人の子供を身ごもって、別れて、かなり年下の男性と子連れ再婚、という遍歴は相当波瀾万丈だけど、その事実よりもその経験を乗り越え、糧にしたヤマザキさんの物事の考え方の方がわたしの心を捉える。
とにかく、妻候補や浮気相手というセクシュアリティを要に女性を見ている、そんな男性の評価だけが女性の美の価値観であってはいけないと思います。それを念頭に置きさえすれば、もっと女性である以前の、人間としての人生が楽しくなるのではないでしょうか。
若いアイドルのような女の子を求める男性、さらにその美意識に合わせる女性に大して苦言を呈している。「他人に求められる」というのはわかりやすい指標ではあるが、それを目標にすると苦しいものだ。
自分に自分で満足するというのはなかなか難しいのだが、作者は「自分の鏡を持つこと」と説いている。周りを気にする日本人的にハードルが高い気がするが、持てるようになりたいものである。

2014-05-04

父親が入院してみて思ったこと(超雑感)

父が突然入院した。
具合が悪いと外来にかかったその日のうちに手術をすることが決まり、そこから入院。大した病気ではないらしく、1週間くらいで退院できるのそうなのだが、少なからず驚いた。
母から突然「父が手術しました」というLINEが来て知ったくらいなので、日本へは帰っていない。

今回のことでの妹の活躍っぷりったら半端ない。
父がいない間、家や父の会社のことをいろいろ手伝ってくれた。
妹は実家を出ているのだが、比較的実家に近いところに住んでいる(田舎の「比較的近い」なので車で1時間以上はかかる)。
今回、たまたま妹が仕事をやめる直前だったので時間の工面がつけやすく、実家を手伝うことができた感じである。
看護師なので病気についても説明してくれるし、病人(父)の扱い方もうまい。
ちなみに弟は日本の大企業に勤めているのだが、休日出勤、深夜残業、なんでもござれな感じで忙しい。(お給料はよさそうなので、ブラック企業なのかはわからない)
でもって私はニューヨーク…
妹が「お姉ちゃんとお兄ちゃんが遠くに住んでるから、わたしばっかり手伝わされた!」と文句を言うのも仕方ない。
そんな頼れる妹は、今年の夏からしばらく留学する予定である。
妹が遠くにいる間、実家の両親に何かあったら!?と考えたら不安になってきた。

今後、親が体調を崩す可能性はどんどん上がるだろう。
そんな中、「東京の大企業で働く」とか、「ニューヨークで働く」っていちばんいい選択肢なのだろうか?
さらに、子供が生まれたらどうだろう?
突然父が死んだら?会社や残された母、実家はどうする?

わたしの実家は東京へ新幹線通勤ができる場所だし、夫の方の家族のことをあまり考えなくていいのでまだましな方なのかもしれないが、30歳を過ぎてやっとややこしい家族や社会についてまじめに考えるようになった。
その中で、「東京近郊に住んで、都心で大企業に勤める(転勤のおそれあり)」というモデルは、仕事内容に対してお給料はいいかもしれないし、明日食べられなくなるという心配はあまりしなくていいけど、田舎の実家のことを考えると、柔軟性のなさがなんだか違うなーと思い始めたのである。
それにひきかえ、看護師の妹の柔軟性ときたら!例えば今回のように親の具合が悪くなったら面倒を見るためにちょっと仕事をやめて、またどこかに戻るということが可能である。「手に職」は強すぎる!

実は、妹は兄弟の中では学校の成績が悪く、「職にあぶれると困るから」という周囲からの強い勧めを受けて看護師という職業を選んだという経緯がある。
そこそこ成績が良かったわたしと弟は、周囲にいろいろ言われることなく進路を決め、田舎を脱出して東京の大企業に職を得たわけだが、こういう事態にはなんの役にも立たない。できるとしたら多少の金銭的援助くらいである。
しかし、日本のすばらしい皆保険制度のおかげで、今回は金銭的援助は必要なかったし、お金で解決できないことがたくさん顕在化した。そうなると、わたしと弟の進路は、正しい選択だったのだろうかと考えずにはいられないのである。
(とかえらそうに書いていますが、しょせん田舎レベルなのですみません…)

父はもう70歳を超えているのだが、まだ働いているのもあって、現代の同年代の人たちと同じように元気に見える。
しかし、年に数回しか会わないようになってもう10年ほど。会うたびに、記憶の中にいる「一番一緒に時間を過ごした頃の両親」の姿と比べて、「あれ?なんだかお父さん(お母さん)、疲れてるのかな?」という違和感を覚えていたのだが、きっとそれは老いなのだなーということにやっと気づいた。

声に張りがないとか、
顔色が前よりよくない気がするとか、
父が食事を気をつけなければいけなくなってるとか、
母が車を運転しなくなったとか(事故を起こしてやめたらしい。電動自転車をあげました)。

別に「親孝行しなきゃ!」とかはあまり思ってないのだが、70歳男性の平均余命が15年と見ると(ソース・厚生労働省)、ちょっと考えさせられる。
1年に2回しか会わないとしたら、あと父と話せるのは30回ほどだ。
実際話してみると、そんなにおもしろくないし、間が持たないことも多々あるんだけど、30からカウントダウンしていくと、1回1回を大切にしなきゃって思うものなのかもしれない。
そして、たいてい、カウントダウンの終わりは突然訪れるものだ。

とりあえず次に帰ったときは、ちょっとした退院祝いとともに、「いろいろありがとう」くらい伝えてみようかな。
ちょびっと恥ずかしいけど。

あと、家族できちんと話そう。これまで、「すぐ会えるよね」と思って、将来のことをちゃんと話したことがなかったのだが、遠くに住む者として、そのくらいはきちんとするべきだろう。
母と妹には温泉旅行でもおごって感謝の気持ちを表さなければ!


◆◆◆
関連過去記事
『今、日本の地方都市がアツイ』

2014-03-28

のんびりパリ週末

パリへ行ってきた!
もう何回目だろうか。初めてその地を踏んだ2007年以来、結構な頻度で行っている場所である。

パリといえばそのおしゃれさとグルメっぷりで全世界の女子のみならず男子の心もがっつりつかんでいる花の都だが、わたしの場合、『ベルサイユのばら』と『のだめカンタービレ』のおかげで行きたくなって、実際行ってみたらまんまとはまって、そこからフランス語を勉強して…なんて歴史はちょっと秘密にしておきたい恥部である。

ちなみにわたしの夫は『マスターキートン』を読んでロンドンに憧れて、留学して…という歴史の持ち主なので、なんとも似た者夫婦と言えよう。
好きなことへの情熱ってすごい。


マリーアントワネット様が投獄されていたコンシュルジュリーとか、

のだめと千秋先輩が住んでいたアパルトマンのロードオブザリング門とか、以前も見たことがあるのだが、改めて夫と一緒に復習した。
ロードオブザリング門、7年ほど前に見たときは原作の通り真っ赤だったのに、茶色く塗られていた。

今回、パリへ行ってみて、自分がだいぶニューヨークの生活に染まっているんだなあということを感じた。
主に以下の4点である。

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1. 入国審査が超ゆるい
アメリカに来てから嫌いになり、トラウマとなったもの。それが入国審査!
どこの空港でもあまりいい思い出がない。
マイアミでは早朝4時に到着してから寝不足のまま2時間待たされ、DCでは1時間45分待たされて乗継便に乗り遅れ、JFKでは1時間半待たされたあげく、「今回は通してやるけど、常にVisaの書類もってろや」と舌打ちされ、ああ、もういやです…
こんな経験から、Passport Controlと見ると緊張で身体が固くなってしまうわたしだが、シャルルドゴール空港での入国審査の行列のところで「待ち時間:4分」という表示がされていたときには驚いた。
この行列なのに4分??というのもあるが、フランスなのに、待ち時間表示とかしてる!!!という点にびっくりである。(ステレオタイプですみません)
いぶかしげに並んでいたのだが、まんまと4分くらいで順番がやってきたのである。係の人に「ボンジュール」と言ったら、別に何も聞かれずにスタンプをがちゃん!と押された。
…いいのかこれで。いいか別に。日本のパスポートの信頼度万歳ということにしておこう。
ともあれ、アメリカの自意識過剰っぷりを再確認したのであった。気持ちはわかるけど、どう見ても人畜無害なただの薄い顔の日本人(わたし)を詰問するのはやめてほしい…


2. ブランドものを持っている人が少ない。服装が地味。
以前も書いたが、わたしがニューヨークに引っ越してびっくりしたことのひとつに、フルメイク・ブランドものを持って街を歩く女性が多いという点があげられる。(過去記事) 
街行く人のブランドの取り入れ方は日本とあまり変わらない。すっかりヴィトンのバッグを持ってモンクレールのダウンを着ているというような人の格好に見慣れてしまったのだが、そんな人はパリにはなかなかいないのであった。
また、ニューヨークみたいに、ゴールドや鮮やかな色をふんだんに使った格好をしている人があまりいない。ピンヒールを鳴り響かせて闊歩する人もいないし、スーツ&ネクタイで決めた男性も少ないような気がした。


3. 買い物はマイバッグがふつう
スーパーで買い物をしたとき、「袋いる?」と聞かれて、ヨーロッパ各地でのマイバッグ普及度を思い出した。
ニューヨークでは、頼まないとビニール袋に物をぼんぼん放り込まれる。さらに、ビニール袋の強度がしょぼいからということもあるだろうが、袋を2重にされることもある。やめてーー!資源がーーー!
ある日、日系スーパーで袋を2重にするのを断ったら、いろいろ理由をつけられて、聞き入れてもらえなかったこともある。レジの人、日本人なのにーーーー。わたしの心に息づく「もったいない精神」がずきずきと痛む。
ちょっと前にサンフランシスコへ行ったとき、「レジ袋いる?」と聞かれてびっくりしたので、これはアメリカというよりニューヨーク、もしくはマンハッタンの問題かもしれない。MOTTAINAIは世界を救うんだよ…!!


4. 時間の流れがゆっくり
ニューヨークに比べるとパリは時間の流れがゆるい。
時間の流れがゆるい場所は東南アジアとか南米とかたくさんあるのだが、なんというかパリは都会の余裕をかんじさせるゆるさである。
たとえば食事のとき、ニューヨークだとレストランに入った瞬間から店員さんが進行状況を逐一確認して、なんとか回転率を上げようと苦心している様子が見受けられる。
しかしパリでは、まずあまり店員さんが来ないし、その結果、オーダーを伝えるのに20分くらいかかったりする。(たぶんこれがいやだという人も多くいるだろう)
食事をした後もコーヒーや飲み物が下げられることはないし、下げたとしても改めて言わないとお会計を持ってこない。結果、4時間とか5時間とか平気で居座れてしまう。
あるビストロで食事をしたとき、店員さんがまかないを食べて、お店の掃除も始めたのに、お会計をせかされなかったのはびっくりした。

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ともあれ、アメリカはマーケティングで大衆の心を惑わせて、大量消費させて、無理矢理にでも経済成長させている感がある。
パリにももちろんマーケティングはあるだろう。メトロには広告がいっぱいだし。でもどこか、
「経済成長よりも、毎日おいしいご飯がまったり食べられればいいよね」
みたいな余裕を感じるのであった。

そんなパリだが、ゆっくりIT化の波が押し寄せているのかなあ、という気がしないでもない。
そのひとつに、メトロの駅で、以前はなかったこんなものを発見。

iPadを模した巨大な電光掲示板!?
ボタンのところをよく見てみると…

パリ交通公団(RATP = Régie Autonome des Transports Parisiens)のマーク…
おちゃめっていうか、なんか訴えられたら負けそうなんですけど大丈夫ですか、と余計な心配をするいちパリファン。
ちなみに、ニューヨークや東京にあふれるデジタルサイネージだが、パリではまだ数が少ないように感じる。
うまく書き表せないのだが、町にある看板はロール式の一定時間おきにぐるっと回って正面に出る広告が変わるタイプのものが中心だった。
(どなたか、英語でも日本語でもフランス語でも、あの看板の名前をご存知でしたら教えてください)

また、ルーブル美術館にも、IT化の波が到達していた。

美術館のガイドをしてくれる3DSソフトである。
ハードコアゲーマーの夫はもちろんマイ本体を持参してソフトを購入したが、3DSを持っていない人は本体ごと5ユーロで借りられる。


館内の道案内をしてくれるし、作品の前に来ると近接したことを感知して音声ガイドが案内される。
ちなみにこれはフランス王家の戴冠式で使われた剣だそうだ。ベルばらの世界…!!
Coronation sword and scabbard of the Kings of France(Louvre)


ゆっくり進む時間と、のんびりIT化する町はなかなか居心地がよさそう、とかニューヨークの行き過ぎた資本原理主義に疲れたぐうたらサラリーマンのわたしは思ってしまうのだが、フランスの若者は比較的安い税金と仕事を求めてロンドンへ向かっている、という記事があった。

Vive Londres! (Newsweek)

they are attracted by the benefits of a less regulated economy, more relaxed labor laws, a more meritocratic society, a lively business networking scene, a large pool of professional talent, and easier access to investment capital. And all this only a two-hour Eurostar train ride from London to Paris, making it easy to stay in touch with family and friends.
It is being billed as the biggest French invasion since William the Conqueror arrived in 1066.
記事では、フランスは雇用関連の法律が厳しい上に税金が高く、何かを始めるためにはコネクションが必要な社会なので、新しいビジネスをやるのなら絶対ロンドン!という気持ちの若者を紹介している。EU内なので特別な申請はいらないし、ユーロスターで2時間で行き来できるし、フランスの家族や友人との関係も維持したまま、チャレンジができるところがうけているのだろう。
ロンドンに住んでいるフランス人は30万人から40万人、それに対してパリに住んでいるイギリス人が8500人、というあたりでも、一方的な流入具合が見てとれる。

今回パリで会ったイタリア在住の友達が、
「イタリアは老後に住むならいいけど、この居心地の良さに慣れてしまうと、ほかの場所へ行けなくなる。若いうちにチャレンジした方がいいのかもしれない」
というようなことを言っていたのだが、これはフランスにも言えることではないだろうか。
確かに悩みどころである。隠居したかのように、のんびりしててご飯がおいしいところで住みたいと思うのは、30代ではまだ早いのだろうか?しかし、毎日ぎらぎらせかせかした社会にいるのは疲れる。もうこうなったら別荘…?とかありえない妄想だけが広がる。

悩みは尽きないが、いろいろ試行錯誤して、そのとき自分がやりたいことをきちんと考えて、そのための努力は惜しまないことなのかなあ、という気がしたのであった。

ともあれ、今は、バゲットが食べたい。



2014-02-15

雪の日の過ごし方 勝手に日米比較

日本が大雪で大変そうだが、長く住んでいる方たちに言わせると、今年のニューヨークも近年まれに見る寒さと雪らしい。
今も灰のように大きなかけらの雪が落ちてきている。
先週も降ったし、2日前にも10センチくらい積もっただろうか。ここのところ、道路脇の雪は、消えそうになると新しい層を重ねて、べちょべちょになりながらもずっと存在を主張している。

ニューヨークで雪が降るといやなのは、道路の水はけの悪さである。
(DAILY NEWSより)
こんな風に、行き場のない水が道路に溢れていて、道を渡るのが大変なのである…
だからそのとき雪が降っていなくても、雪が降ったあとはしばらく長靴は必須だ!ということを覚えた。
油断して普通の靴で出てきちゃった人を尻目に水たまりに飛び込むときの爽快感ったら!
ということで、先日もうろたえる観光客っぽい人の前で得意げに水たまりに飛び込んだら、すぐ近くに浮いていた氷の固まりがはねて、長靴の口から内部に侵入してきた。
…やっぱり飛び込むのはやめよう。

◆◆◆

ところで、ニューヨークに暮らしていると、雪による予定キャンセルがよくあるなあと感じる。
ご飯を食べに行くとか、舞台を見にいくとかそういう約束は、たいてい大雪という情報が入った段階で相手から「今日は雪だから別の日にしない?」という提案がされる。

学校や会社がお休みになることも多いようだ。会社はまちまちなので、お休みにならない側の会社の人が文句を言っているのをよく聞く。
雪の日は何をするのもものすごく不安定で不便だし、家に帰れなくなる可能性があるので、人々はなるべく家にいられるようにするし、学校や会社もそうするべきと考えているようだ。

そんな「雪の日は家にこもるのが一番」派が多いニューヨークだが、de Blasioニューヨーク市長が、雪の日に学校を休校にしなかったということで批判を浴びているらしい。




市長の言い分だと家だとご飯が食べられない(!!)子供がいるので、通常通り学校を開いたとのことだが、まず学校まで行くのが大変だし、危ないじゃないか!ということで、決定に批判的な意見が出ている。
有名なお天気レポーターのAl Roker氏が市長の決定をTwitterで批判したというのも、議論の火に油を注いでいるようだ。




日本の大雪のニュースを見て、ニューヨーカーの「雪の日は家にこもる」という潔いまでの姿勢をちょっと見習ってもいいんじゃないかなあと思った。
日本では「約束は絶対!」という感じが強くないだろうか。

東京に住んでいた頃、雪が降ったから休みますとか、予定をキャンセルしますとか、なんとなく言いづらい雰囲気があった。
お店とかだと雪だろうがなんだろうがキャンセル料を取られたりするし(仕方ない理由もわかる)、公的機関は締め切りを過ぎたら受け付けてくれない。
こういう日本のきっちりしたところは正しいし助けられる部分も多いのだけど、行き過ぎると人々を危険な目に遭わせるんじゃないだろうか。

今回は天気予報が大きくはずれたという不運があるそうだけど、外を見れば大雪っていうのがわかっている状況なのに、
「電車を走らせろ!」とか、「宅配が時間通り届かない!」とか、「田舎で携帯が3Gしかつながらなくて遅い!」というような文句をインターネットで見ると、「サービスを提供する側も人なのになあ…」とものすごくやるせない気持ちになる。
わたしは、安全じゃないかもしれない線路を走る電車に乗る方が怖い。宅配便は雪がとけて道ができてからでもいいじゃん。こんな日なら携帯はつながるだけでもありがたいじゃないか!

人それぞれの事情があるのはわかる。でも大雪の日にまで、自分の行動を変えずに、最高品質を求めなくてもいいんじゃないかなあ。
もちろん、特にライフライン系のサービスを提供する側が、自然災害に備えた仕組みを準備しておくことは大切だと思う。
でも、サービスを受ける側も「雪だから仕方ない」って多少の不便や遅れや延期、中止とかの予定の変更を柔軟に許せるようになればいいのになあと思う。

日本では時間通りに走る電車や、時間指定配送、そして豊富な品揃えの24時間営業のコンビニや素晴らしい品質を誇るライフラインのおかげで、普段は制約のない超便利な生活ができる。
それ自体がものすごいことなんですよ!と制約ありまくりのアメリカから叫びたい…のはひとまず置いといて、そういう超便利な生活に慣れてしまうと、今回のような非常時に対する警戒心が薄れてしまうのかもしれない。

流通が途絶えて食べ物が手に入らなくなるとか、携帯がつながらなくなるとか、家に帰れなくなるとか、震災で経験したことも多いから、あの教訓を忘れてはいけないなあと自戒するのであった。

◆◆◆

長くなってしまった。
最後に、先月の大雪のときのアメリカのニュース番組のはしゃぎっぷりを紹介して終わりにしよう。

これは『TODAY』という朝のニュース番組で、日本の某ニュースのように、外からの中継を交えて生放送しているのだが、先月の大雪の日のセットはやけに大掛かりだった。

雪が降ってるのに、外にソファーを置いて、たき火してる…
さらにキャスターたちはニュースを伝えながら、長い棒にマシュマロを刺してあぶって食べているのである。お行儀悪い…
(ちなみにキャスターたちの前に置いてあるのはホットチョコレート)

でもって、あぶったマシュマロを指し棒にしてお天気を解説する人!!
…あ、これ、前述の学校を休校しなかったことを批判したAl Rokerさんじゃん…
大雪なのに外出てる…中でやってください…


雪の日は正々堂々家にこもろうぜ!!
…ということでこれをやって3連休が終わりそう。

いやーぷよぷよはやばい。いくらでもできちゃう。
インターネット経由で夫や日本の弟妹と対戦しております
…平和ぼけですみません。

以上、引きこもりに正当な理由ができてちょっと嬉しいわたしが雪のニューヨークからお送りしました。