2013-08-11

今、日本の地方都市がアツイ

先日の帰国時には、某地方都市の実家にも帰った。
わたしの実家は東京から新幹線で1時間半、人口約20万人弱の決して大きくはない、でもそこまでさびれていない地方都市である。
「そこまでさびれていない」というのは最近抱いた感想で、実家を出た10年前から4年ほどまではバブル崩壊や中央集権のあおりを受けて、看板は古めかしいし、建築物には錆が浮いているしで、なんとなく元気のない雰囲気を漂わせていた。実家に住んでいたころのわたしは、たまに東京に行って洋服や雑貨を買い物するのに喜びを覚える典型的な田舎の少女だった。その頃は途中にある大宮ですら輝いて見えていたわ…ふふふ…
遠い目はこの辺にして、自分が変わったのか、地元が変わったのか、判別不明なのだが、最近地元が熱い。

遠くからの写真でよく見えないかもしれないが、新幹線の駅を降りたところで、「打ち水大作戦」と銘打って、街の人たちが集まっていた。
バケツとひしゃくが用意されていて、10時くらいにはハッピを来た人たちが駅前で水をまいていた。
地元のTVだろうか、カメラも来ている。こんな取組み、昔はやってなかったよなあ。高齢者の方から、子供まで、みんなで水をまいている姿が微笑ましい。

どうやら最近は観光にも力を入れているようで、こんなものも。

美味だれ…聞いたことない。我が地元で焼き鳥が名物なんて知らなかった…
B級グルメとか騒がれているから、名物で町おこししようとしているのだろうか。おいしそう。次に帰った時に食べてみたい。
そのほかにも、ロケに使われた映画や、有名な戦国武将を前面に押し出した看板がたくさんあって、「ああ、こういうのを目当てに観光客がやってくるのね」というのが推し量れる。いずれにしても昔こういうのなかったよなあ。

まずは、オンラインで予約した駅近くの美容室へ。ホットペッパーが我が地元までカバーしていることにびっくりである。インターネットすごい。
行った美容室のインテリアはきれいだし、店員さんもみんなおしゃれで丁寧。かなり細かく希望を聞いてくれるところもいいし、炭酸泉でのシャンプーもついて4000円ちょっとって破格である。腕も都内で切ってもらっていた美容師さんと比較しても遜色なし。地元にこんなおしゃれで居心地のいい場所があるなんて、昔では考えられなかった。その服どこで買ったんですか?とか聞きたいくらいである。

その後、妹と一緒に巨大ショッピングモールへ。我が地元には10年ほど前に大きなショッピングモールができたのだが、2年前にも2キロほど離れた場所に違うショッピングモールができた。2年前にできた方には行ったことがなかったので行きたかったのである。

我が地元に関する記憶が10年前からほぼ止まっているわたしはそのモールに足を踏み入れて愕然とした。
10年前には田舎では望むべくもなかったスターバックスはもちろんのこと、ロフトやカルディ、トーホーシネマズまでそろっているのである!!
地方都市になかったのは、こういう巨大雑貨屋さんとか、輸入食品屋さんである。それをよーーーーくわかったラインナップと言わざるを得ない。大きな映画館も今までなくて、新作が始まるのは全国公開からちょっと時差があったりした。
あまりに感動したので、ロフトでボールペンの芯を買い、無印で安くなってたカーディガンを買ってしまった。ついでに果物や野菜からジュースを作ってくれるお店で妹とジュースを飲んだ。なんか新宿駅のプラットフォームでジュースを飲んでる人みたいである。

妹が運転する車の中で、興奮冷めやらぬわたしはまくしたてた。
「昔何にもなくて退屈だと思ってたけど、今じゃなんでもあるね。住むのに全然問題ないね」
実家からちょっと離れたさらに小さい街に住んでいる妹も同意する。
「そうなんだよ!いいお店も結構あるし、人も優しいし、温泉も近いし、ほんといいよね!」
夏は暑いけれど、緑が多いし、ビルが少ないので、東京みたいないやな暑さではない。近くの温泉は朝6時(!!)からやっているし、空は澄み渡って空気はきれいだし、食べ物はおいしい。都内で高い家賃を払ってちょっと緑が多い下町に住んでた自分がばかばかしくなる環境の良さである。
試しに都内で住んでいた家と同じような条件の家を探してみたら、家賃は半分以下であった。ニューヨークと比べたら鼻血が出そうな差なので忘れることにした。

ニューヨークから日本に帰ったら、そうだ、実家を改装して、東京には新幹線通勤してみようかなー。ぐふふ…なんて帰りの新幹線の中で果てしない妄想を繰り広げていたので、新宿の紀伊国屋でこんな本を見つけたときにジャケット買いならぬタイトル買いをしたのも必然であった。

地方にこもる若者たち 都会と田舎の間に出現した新しい社会 (朝日新書)(阿部真大)

この中では、倉敷市が例として出てくる。多分、倉敷は我が地元よりも全然大きい都市に見受けられるけれど、昔はただの田舎だった「地元」が、巨大ショッピングモールの登場により魅力的になっている、というのは共通している部分だと思う。
この本ではそこまで言及されていないけれど、田舎出身のわたしとしては、インターネットでなんでも買えるというのも大きい。

こういう環境は商店街を駆逐していく、という論が述べられているけれど、我が地元は東京からの地の利に恵まれているからか、郊外に移転したお店や後継者がいなくて廃業したお店の後に、若い人が始めたおしゃれなカフェやパン屋さん、雑貨屋さんなんかが入ってきてなかなかおもしろい。昔から続いている甘味屋さんの近くに木目調のナチュラルなインテリアの雑貨屋さんやベーグル屋さんが並んでいる姿はなかなか魅力的である。古い映画館では映画ではなくライブを開催するなど、とにかく町中で色々な試みがなされている。おそらく、そういう試みもテナント料が安いから気軽にできるのかもしれない。東京で飲食店開業するには最初にものすごい金額が必要そうだし。

もちろん、飲食店のような物理的な事業でなく、ソフトの事業は政府のディジタルディバイド対策さまさまで、地方の得意とするところである。ちょっと前に読んだこの記事を思い出した。


これからは、こうやって「民」主導で地方の活性化が進むのかもしれないなあ。IT社会バンザイである。

選択肢が多く、なんでも便利なことが魅力の都会での生活に対して、とにかく心身によさそうな地方都市での生活。今の「草食系」で「ゆとり」の若者には後者の方がはやりそうだけど、どうだろうか。

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