2014-11-27

アメリカの車社会に屈した日 ~車、買っちゃいました~

わたしは車所持否定派である。そんな派閥があるのかは知らないが。
車はそれ自体も高いし、保険も駐車場もかかる。ガソリン代も気になる。
東京近郊は本当に公共交通機関が便利で、渋滞や、駐車場を探すわずらわしさを考えると、電車で行くより車で行く方が早い!という場所があんまりないような気がする。大江戸線とか京葉線とかめんどくさいけど、なんだかんだで電車のが早かったりすると思う。

ということで、買いたいものリストに「車」という項目が出てくる機会がここ十数年なかったのだが、少し前に郊外に引っ越してからというもの、さすがに生活に不便が生じてきた。
よくよく周りを見ていると、アメリカ郊外…というか、ニューヨークの地下鉄圏外に住んでいる人は、だいたいみんな車を持っている。その理由がわかってきたのである。

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(1)公共交通機関の品質が悪すぎる
マンハッタンに住んでいたころ、地下鉄の不安定さにぶーすか文句を言っていた。今読むと東京の水準が忘れられていなかったんだなあと思う。(過去記事 『ニューヨーク地下鉄との終わりなき戦い』
…が、ここ、首都の公共交通機関に比べたら、ニューヨークの地下鉄なんかかわいいものだった。
ワシントンDC近郊を走る地下鉄は、車両も線路も大してメンテナンスしてないし、乗り心地を考えた運転をしてくれないので、がたがた揺れて、10分ほどの乗車時間にもかかわらず、毎日ほぼ100%酔う。週末は始発が朝7時、運が良くても電車の間隔は20分おきくらいになる。
さらに、空港や免許センターやコムキャストみたいなほぼ公共施設に公共交通機関で行きづらい。25分電車に乗ったあと、降りて20分歩くとか、30分おきのバスに乗り換えて1時間以上かけて行かなきゃいけないとか…
そんな場所が、「車だったら20分」と出てくるのである。これは車所持を前提で街を作っているんじゃないだろうか、ということに気づいたのだった。

あと、電車のマナーが東京のように確立されていないので、車内は混む。せっかくあるつり革も使い方がわからなくて、みんな棒を確保しようとする…
東京メトロのみなさん、新しいビジネスとして電車の乗り方コンサルタントなんてどうでしょう。

(2)車で移動しやすい
車だったら15分でも、東京みたいに駐車場探すのに苦労するんだったら意味がないのだが、さすが土地だけは余ってるアメリカ、郊外だったら駐車場探しに苦労することはない。
駐車スペース空きまくり。
道路わきの駐車スペースも空いていることが多いし、いたるところに州の公営駐車場があって、25セントで12分という安さな上に、夜間、土日は無料である。
もちろん、お店にもだいたい駐車場がついている。

(3)ガソリンが日本より安く、電車が日本より高い
ガソリン代が日本よりかなり安い。今日は1ガロン2.799ドル(ソース)。

1ガロン=3.785リットルなので、1リットル0.74ドルである。今は円安だけど、それでも日本の半額くらいじゃないだろうか。日本車が燃費改善を追求している理由もここからもわかる気がする。
ちなみに郊外の我が家から電車でDCの中心地へ行こうとすると、片道3ドルほどかかる。往復6ドル、割引はほとんどない。毎日乗ろうがなんだろうが、ふつうの民間人に割引はないのだ。(公務員はあるっぽい?)
6ドルということはガソリンが8リットル買える。よほど燃費の悪い車でなければ、10km足らずの距離に、これだけのガソリンを消費することはないだろう…
ともあれ、公共交通機関の高さやしょぼさ、ガソリン税の優遇っぷりは、自動車業界のロビイストの手腕を称賛せざるを得ない。

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つまるところ、アメリカは、「便利に生活したいなら車を買え」ということである。
その思想に屈するのは公共交通機関を心から信頼する日本出身者としてちょっと悔しいが、これ以上、東京にいたころの気持ちをひきずって車を買わないのはなんだか現実をちゃんと見ていない気もする。田舎の実家にいたころは、車を持つことに疑問を抱かなかったじゃないか。ということで、ついに買ってしまった…

なんとなくハイブリッドで地球環境を意識してみた。アメリカの流行に踊らされている気もするが、ともあれ、これで行動範囲が格段に広がったのはたしかである。

最近、アメリカでも若者の車離れだったり、シリコンバレーのバス通勤がクール!みたいな風潮があったりもする。

Millennials Don't Care About Owning Cars, And Car Makers Can't Figure Out Why(Fast Company)
「グーグルが運営する通勤バス」をめぐるさまざまな問題(WIRED)

のしかかる教育ローンを考えると車買えません…というのはわかる。しかし、こういう場合でも、もし若者が田舎に住んでいたら、日本の地方都市と一緒で、親世代から古い車をもらってたりするんじゃないだろうか。
シリコンバレーのバス通勤も、「住んでるところがサンフランシスコだからできるんだよねー」と今のわたしはうがった視線を送ってしまうのである。
さらに、アメリカでは公共交通機関が便利なところほど、車を買えないような低所得者層の人が集うという問題もあるそうで、日本ってやっぱり平和だよなあと思わざるを得ない。

これからもしアメリカに来る人で、「絶対に車持ちたくない!」という人は、治安とか家賃とかの問題も飲み込んで、とにかくその都市の中心地付近に住むことをおすすめする。きれいで家が広くて家賃がお手頃だからという理由で、うっかり郊外なんかに住んではいけない。わたしのように…
でもきっと、都市中心地でも車なしではきついってところがたくさんあるんだろうなあ。アメリカはやっぱり広い。


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(2015/4/3 追記)
DC近辺でも「若者の車離れ」は深刻で、いわゆるミレニアル世代に住んでもらうには公共交通機関が絶対に必要だ、という記事を見つけたのでご紹介。

Suburbs such as Montgomery County rethink transit to court millennials(Washington Post)

この記事で出てきているMontgomeryカウンティーというのは、DC郊外の高級住宅街。もともとかなりハイソな場所なのだが、車必須という環境は若者にとって全然魅力的じゃない、という話だ。記事の中に出てくる人の「地下鉄の駅があるから中華街(※あんまり治安がよくないといわれている)に決めた」というところが、おそらくこれまでの価値観と間逆なのだろう。

「使いづらいから公共交通機関を使わない→赤字→整備できない→ますます使わない」というループに入っちゃってるような気がするこの辺の公共交通機関。ともあれ、もうちょっとなんとかなりませんかねー。日本のテクノロジーがんばれ!

2 件のコメント:

  1. 車の件同感です。
    クィーンズ在住でマンハッタン勤務ですが、一応私用の車持ってます。郊外から引越ししてきてからやっぱり手放せませんでした。やっぱり車を手に入れると自由が手に入りますねぇ・・・。

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  2. うんうん、そうですね!
    ちょっと前に読んだ本に「車を持つと、それまで想像していたよりもさらに遠くへ行けるのよ」というような言葉があって、心から同意しました。
    せっかく買ったのでめいっぱい活用して、どこかへ行きたいです!

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