「なんでベジタリアンじゃないの?」
先日、スペイン人の大学生にそんな質問をされて、その発想はなかった…と思う中、やっと読んだこの本。
先日、スペイン人の大学生にそんな質問をされて、その発想はなかった…と思う中、やっと読んだこの本。
(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)(堤未果)
何より衝撃を受けたのは食べ物に関する数々の記述。
安全が証明されていない遺伝子組み換え作物、借金のかたに大企業に支配され、原価割れの価格でお肉や卵を出荷する小規模農家…ときて、まあでも、わたしよく使うスーパーはちょっとお高めでオーガニックを前面に出してるホールフーズですし、大丈夫ですよね?と思いきや、2章でぐさりとメスが入れられた。
実はホールフーズの主要商品は、完全な有機農業ではなく「自然派の」通常食品なのだが、普通のスーパーで買うのとは雰囲気がまったく違うため、顧客は喜んで割高価格でも財布を開く。…あの雰囲気なら大丈夫だと思って、表示もちゃんと見てませんでした…
スーパー大好き、食べ物大好きなわたしはホールフーズの戦略に踊らされていた自分が恥ずかしい。確かにオーガニックにしては安すぎるもんなあ。反省。
政府と業界が作り上げた「オーガニック」の基準は生産効率を上げるために穴だらけ、認証を取るコストは高く小規模農家はどんどん大企業に吸収されていく。大企業は生産から販売まで事業を垂直統合してコストカット、効率化追い求めて産業の工業化が進んで、その中ではこんなことが行われていて…という話が書かれていて、背筋が冷たくなった。
本当の意味でのオーガニックは、地産池消で生産者の顔が見えることが基本ですよね。石油を使って何百キロも離れた場所にあるスーパーマーケットに流通させ、低コストで大量に生産するやり方とは根本的に相容れない。(中略)鶏肉を見たときに、それがどこから来たのか、どうやって育てられたかを考えることは、地産池消という本来のやり方を続ける小規模有機農家を守るだけでなく、私たち自身が他のいのちとのつながりを見失わないためにも、とても大事なことなのですこの有機農家の人の話がぐさりと突き刺さり、影響されやすいわたしはグリーンマーケットへ行ってきた。
グリーンマーケットはすべてがオーガニックとは限らないけど、少なくとも仲介業者はいないし、生産者の人と直接対話ができるし、地産池消である。
土曜日はお店も多いし、にぎわっている。
いろんな種類のトマト。おもしろいーー。
えー、キジとかウサギは買ってないけど、このお店でチキンを買った。
白いナス初めて見た。買わなかったけど。味も違うのだろうか。
冒頭の「なんでベジタリアンじゃないの?」という質問に対して、
「小さいころからの食生活の中で当たり前のようにお肉を食べてたから欠かせないものになっている。たんぱく質の補給のためにも必要だと思っている」
と答えたんだけど、食べるからにはちょっと高くても誠実な生産者から買って、彼らの事業を支えることくらいはしてもいいだろう。いや、そうするべきなのかもしれないな。収入と支出のバランスは難しいけれど。
この本はやや煽りすぎかなーという部分もなきにしもあらずだけど、取材をした人が考えていることは事実だろうし、とにかく色々と自分の生活を考えさせられる1冊だった。
そういえば最近こんなニュースを見たことを思い出した。
イオン、全国で大型農場 PB野菜販売1000億円に(日経)
日本でも確実に産業の垂直統合は広まっているし、日本政府は農地集約を推進しているのか。
安易な言葉ではあるけれど、政府や企業のこういう動きに対して「食の安全」を確保するためには、消費者が自分のお金をどういうものに使うかという行動で意見を示していくことが大切なのだろう。
物の価格には理由がある。安いものにはそれなりのからくりがあるし、「高いものはいいもの」という思い込みを利用して不当に高く売っているものもある。さらになんでも怖がるのはばかばかしいし、かと言って無頓着すぎるのもよくない。試行錯誤しながら自分の判断基準を磨いていきたいと思う。
今のところ、わたしの判断基準というか努力目標はこんなかんじである。
- 安いものには理由があるので、安くないものと原料とか産地を比べる
- 高いという理由だけで買わない
- よくわからないものは適度に怖がる
- お肉類は成長促進剤や多量の抗生物質を与えられたものをなるべく避けられるように、可能であればオーガニックにする
- グリーンマーケットを活用する
グリーンマーケットで買ったチキンで作ったカレーはおいしい気がした。