2013-10-21

初めてわかりやすいナンパをされたので撃退法を考える

おそらくこれまでの生涯で初めて、ナンパと思われる経験をした。

ひとりで地下鉄を待っているときに、すらっとしていておしゃれな服装をした推定40代の男性に声をかけられた。
この地下鉄はアップタウン行き?と聞かれたので、そうだよ、と答えて携帯に視線を戻したら、観光で来てるの?学生?とか、会話を続けられている。
いわく、彼はミラノから来ているジュエリーデザイナーだそうである。自分で作ったというでかでかと光る指輪を見せつけながら、
「話したかったんだ。この指輪と君のストールが同じ色だったから」
なんて言葉を投げかけられる。

………
イ、イタリア〜〜ン。

さすがにナンパというものに縁のないわたしもこれはめんどくさい、ということに気づく。
1時間くらい時間があるならお茶しない?と聞かれるが、友達と会うのでと言って断ったところ、別れ際に携帯の番号を聞かれる。とっさに1つ数字の違う番号を教えた。彼はセントラルパーク近くの駅で降りていった。

この内容を「あれってナンパだったのかなあ」という感じでアメリカ人女子たちに話したところ、道を聞かれた、ということを言った時点で「ナンパじゃん」と断定された。
ひとりの子は本当によくナンパをされるそうである。オフィスのエレベーターで知らない人に電話番号を聞かれたり、街で声をかけてきた人が地下鉄についてきたり、しつこいナンパは怖いとすら感じることがあるそうだ。
ナンパされた経験がないわたしからすると、「ナンパ=モテ」だったのであるが、彼女のそんな話を聞いていたら、なんだかちょっと違うのかもしれないという気持ちになってきた。

日本人女性は外国人にもてるという話をよく聞く。
わたしは実感したことがないけれど、きっと辟易している人もいるのではないだろうかと思い、今日は「ナンパをスマートに断る方法」について考えてみた。
「長い人生で初めて1回ナンパされたくらいでなんて自意識過剰な」という冷たい視線を感じながらも、世の女性たちを守りたい!という使命感から書きますよ、書きますってば!!

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(1)Rejection Line
「電話番号を教えて」と言われたときに断るのはなかなか難しいよねという話になった。
前述のアメリカ人女子は、1回「携帯が壊れてるの」と言ったら、突然ものすごい剣幕で罵詈雑言を浴びせられて怖い思いをしたそうだ。
でもって、わたしみたいに1つ数字を変えて嘘の番号を教えるのも、知らない誰かに迷惑がかかる可能性がある。(ごめんなさい)
そこで、これ!Rejection Lineと呼ばれる電話番号である。

Rejection Line

要はお断り専用のダミーの電話番号である。ためしにここで流れる内容が聞けるのだが、
「残念ながら、この電話番号を渡した人は、あなたと話したくないようです」
と流れる。
ここからが面白いところで、音声はそれだけで終わらず、「慰めてもらう」「悲しい詩を聞く」「現実的じゃないけど望みを捨てない」の3つの選択肢から選べるようになっている。
ぜひこの番号を携帯に「My private phone」とかいう名前で登録しておいて、相手に教えたいものだ。


(2)自分の連絡先は教えないで、相手の番号だけ聞いておく
これは日本人男子とアメリカ人女子が考えた技なのだが、
「自分の番号は人に教えないことにしているの。わたしから連絡するね」
と言って、相手の番号を聞き、その場を乗り切る、という技である。
考案した日本人男子は、
「合コンとかでよくあるんだよ。で、絶対連絡が来ないんだよ」
と遠い目をしていた。
えー、悲しいお知らせですが、合コンやナンパでこの言葉を聞いたみなさん。連絡が来る見込みはなさそうです。


(3)結婚指輪をする
今まで結婚指輪の効果に疑心暗鬼だったのであるが、周囲に言わせると、しといたらある程度役立つんじゃない?とのこと。
ということで、ナンパうざい!と思う人は適当な指輪をしておくといいかもしれない。
…ほんとそうですよね。すみません。ちょうどしてなかったんです。その日。というか、基本的にしてないんですよ…めんどくさくて…

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ちなみに待ち合わせ場所に現れたアメリカ人女子は、わたしの話を聞いて、男性の要望をいろいろ問いただした上で、
「あーーー、わたし、その人だったらついていっちゃったかも…」
と言っていたのであった。おい………

これだけだとなんなので、カップルが仲睦まじくキャッキャウフフしているロックフェラーセンターのスケートリンクの営業開始をご報告しておきます。
冬はもうすぐ。

2013-10-12

最強のお風呂のお供=iPad+防水カバー+Netflix(Hulu)

アメリカの好きなところ。それはインターネットサービスの多様性にある。
その中でも特に動画配信サービス!テレビを見ないくせに、NetflixとHuluは愛用している。

NetflixとHuluの違いはそのコンテンツにある。
Netflixは映画やTV番組の膨大な量のコンテンツを提供している。昔放送していた番組を探せばだいたいあるのはこちら。
Huluはテレビで放映されたすぐあとに配信されたりするそうだ。日本のコンテンツにもこれは言えるらしくて、先日日本で放送したばかりの番組が見られるのはすごい。

…というようなことがこちらのリンクにも書いてあった。

どちらかひとつ契約しろ、と言われたらNetflixだろうか…ということでNetflixを契約していたのだが、ある日、夫がHuluを契約していることが発覚。どちらも1か月数ドルなのでまあいいかということで、我が家は両方契約している。ちなみにアメリカは配送事情が悪いという理由で、Amazon Primeも契約しているので、Amazonのストリーミングサービスも利用可能…1日は24時間しかないのに、あふれるコンテンツである。

実はNetflixもHuluもしばらく使っていなかったのだが、これら動画サービスや電子書籍というコンテンツに、iPad+防水カバーというハードを組み合わせると、お風呂の時間が超楽しいことに気づいて、最近ヘビーユーザーである。

こんな感じの巨大ジップロック的なケースを夫が怪しい雑貨屋さんで数ドルで買ってきてくれたのだった。日本の方がいっぱい種類がありそうだけど、アメリカ在住の方は、「waterproof iPad case」というキーワードをAmazonで調べるといっぱい出てくるのでどうぞ。

 
こんなかんじ。ぶらさげられるようになっているのがおもしろい。シャワーで使うことを考慮してなのだろうか。

自分が知っている日本のコンテンツを英語吹き替えや字幕つきで見ると、「この日本語のセリフはこう訳しているのかー!」というのがわかっておもしろいし、勉強になる。おかげさまで、「Screw it !」という表現を勉強しました。(※「くそっ!」みたいなかんじ。どこで使うんだ…)
なお、お風呂に入っている間は知らない単語や使いたい表現が出てきてもメモができないので、スクリーンショットを撮る。


Dynastyって知らなかった…けど、話の内容がわかるので、すんなり覚えられるのである。
英語字幕も勉強になるけれど、英語に吹き替えられているコンテンツ+英語字幕だとなおさらいいと思う。

賢明な読者のみなさんはお気づきだと思うが、この方法はせっかくアメリカにいるのに相変わらず日本のコンテンツばかり見てしまう自分が、ちょっとでも英語に触れるようにするためにやっている苦肉の策である。アメリカのおもしろい番組知らないし、たとえ面白そうなものがあったとしてもテレビだと広告入りすぎて見る気が失せちゃうし…ぶつぶつ…

しかしだ!意味がわからなすぎるものを見たり聞いたりするよりは、多少中身がわかるものの方が身になる、とこちらに書いてあった。

 
SLA研究の結果わかってきたことは、インプット、それも「理解できるインプット」が言語習得のカギを握っているということです。(中略)まず、「自分の興味分野を徹底的にインプットする」ことをおすすめします。
ということで、引き続き自信を持って日本のコンテンツから英語を吸収しようと思う。

しかしお風呂の中で見ているのがスポーツの話とか、フランス革命とか、どうも攻撃的なものが多くて日常生活で使えなそうなところが悩みである。
もっと優しいカジュアルな表現もね、ということでこちらも投入してみた。

 
ジブリの中ではこれが一番好きだし、何度も見られる自信があるのでこれを買ってみた。アメリカのAmazonで20ドルくらいだったので、日本で買うのとそんなに差がないかも。

これはドラマも途中まで見てたんだけど、マーカーひきながら読めるように、紙の本を買ってみた。各キャラクターの描写を読むと、ドラマのキャストがはまり役だったんだなあというのに感動する。

あれ…気がついたら、「英語の勉強」という後ろ盾を得て、「本や見たいものを買いまくる」持病がうずきはじめたようだ。
とりあえず全部ちゃんと消化しよう。芸術の秋にまたもやひきこもり決定。

世界中のあらゆるコンテンツがオンデマンドでインターネット経由で見られるようになることを切に願う。
そしたら違法アップロードも少なくなるし、コンテンツ業者の人も収入を得られるのにねえ。

2013-10-06

『そして父になる』、『風立ちぬ』をニューヨーク映画祭で見た

秋になって、イベントが多い。
気になっていた日本映画2本が上映されるとのことなので、ニューヨーク映画祭へ行ってきた。今年で51回目だそうだ。

会場のあるリンカーンセンター近辺は、夜歩くと眺めが壮麗でたのしい。噴水の前で語り合うふたり。うふふ。

まず見たのは『そして父になる』。

映画祭の長い歴史のおかげなのか、ニューヨークという場所のおかげなのか、是枝監督もいらっしゃっての上映会。しかも上映後にQ&Aセッションがあるという。ただの「ご挨拶」じゃすまされないところがさすがである。

これは始まるちょっと前に撮った写真。上映が開始するころには満席だった。意外と日本人少ない。

こちら上映後のQ&Aの様子。
観客からひっきりなしに手が挙がって、たくさんの質問が監督に浴びせられる。
ふたつの家族の違いを極端に出すためにキャストを選んだとか、
キャストは声を重視したとか、
子供を撮るときには台本をあらかじめ渡さないでその場でセリフを伝えて話してもらうとか(これは『誰も知らない』のときにも言ってたかも)、
テイクはあんまり長くとらないけど、この映画の中で一番テイクを撮ったのはお母さんとケイタくんが電車の中で話しているシーンで、テイクに時間がかかったので電車が駅に止まって、真っ暗な中で話すふたりという演出ができたところがよかったとか、
そんな話をされていた。作り手に直接質問して答えがもらえるってすごいなあ。

話の内容は、ものすごく簡単に言うと、田舎でほったらかし子育てをする家族と、都会で子供を私立小学校に入れてがっつりしつける子育てをする家族の対比で、ワーカホリックであまり子供と関われない父親が田舎の子育て家族との交流を通して自分の生き方、子供との関わり方を考えていくというお話。
わたしは自分の育ちが似ているので、田舎側の家族の形を大絶賛派なのだけど(というかそれ以外できる気がしない)、抵抗を覚える人の気持ちも容易に想像できる。福山さんの妻はひとりでいろいろ抱え込んでいて、わたしは見ていて気の毒になった。でもあれがあるべき「良妻賢母」と言う人もいそうだし、この辺は意見が大きく分かれるところだろう。
あと、わたしは真木よう子さんの演技が肝っ玉母さん的で本当にいいなあと思ったのだけど、夫は「きれいすぎてあの役には浮いてる」と言っていた。
ところで、どう考えても福山さんのサービスシーンだよね!というところがあって思わず笑ってしまい、隣にいた夫に話しかけたところ、彼は号泣していたので後で怒られたのであった。わたし…もっと素直に映画を見るべきである。

この映画の英語のタイトルは『Like father, Like son』。日本語と英語でタイトルの対象にしている時間が違うのかなあと邪推。是枝監督は「ふたつの家族の交流を通して、主人公の父としての成長を描きたかった」、とおっしゃっていたので、日本語のタイトルはそれをそのまま表しているのだけど、英語のタイトルは取り違えられた実子ではない子供との時間に焦点を当てているような気がする。


はい、それでは次。『風立ちぬ』。英語のタイトルは『The Wind Rises』でそのまんまである。

こちらは話題作だからか2回上映があったのであるが、わたしたちは2回目に行った。
話の内容は言わずもがな、飛行機を作りたいという熱意に駆られた主人公の半生…と書くとさすがにちょっとあっさりしすぎかもしれない。
『そして父になる』よりも観客の年齢層が若く、日本人も多い気がした。
このパンフレットの紹介文がおもしろい。
The Wind Rises is something wondrous - a pacifist film with a protagonist who understands that his country is headed for disaster but pursue his dream. It's also a great and astonishingly beautiful work - and quite a controversial one in Japan - about the fragility of humanity and the pursuit of love.
主人公が抱える矛盾を通して平和を描いているとか、人間の弱さと愛の追求について美しく描かれているところが日本では賛否両論だ、という解説をしている。
主人公は飛行機を作ること以外頭にないような人で、戦争に向かうという状況の中でも淡々と自分の夢を追いかけている姿はかっこいい。主人公にあまり感情の起伏が見られないためか、周囲の人物の喜怒哀楽の表情が際立つというか、みんないい味を出している。
しかし…わたしは主人公の演技にあまりにも起伏がないような気がしてしまって、子供から大人になったシーンの第一声からずーーっと違和感が消えず、なんだか最後までいまひとつ話に集中できなかったのであった。よく言えば朴訥、素朴な感じなので、そういう演出だったのかもしれないけど。
この感想はあまり理解してもらえなかったのだが、わたしの敬愛する沢木耕太郎さんが同じことを言っている、ということを教えてもらった。

「風立ちぬ」諦めきれない快感の続き(朝日新聞)

あと、外国の人たちがイタリア語、ドイツ語を話しているのに、突然日本語を話し出すという演出はちょっとびっくりした。あれはずっと外国語で喋ってもらっちゃだめだったのかなー。…と細かいところをぐちぐち言っていますが、隣の夫はやはり号泣していた。
前述の通り詩的で、場面がころころ変わるので、その場面の推移や、ひとつひとつの言葉をじっくり見られたら違う感想を抱きそうである。もう1回集中してじっくり見たいなと思った。

ところでポール・バレリーの詩と言われてあとで思い出した。バレリーが創作活動をして亡くなったフランスのSèteに昔行ったことがある。

海辺の墓地。青い海といい、思い思いの形の墓標が立ち並ぶ姿といい、美しい。
潮騒だけが周囲を支配しているような静かでいい場所だったなあ。また行きたい。行きたい場所が多くて本当に困る。

ところでこの画像を探そうとして、昔の旅行の写真が全部外付けハードディスクの中に入っていることに気づいた。
そのハードディスクをつないだら、PCに認識されない…
ということで、これはかろうじてオンラインに残っていた写真である。

………

ほんと、アナログというか目に見えるオフラインなものが信用できない時代になってきました。
うう、どうしよう…


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(追記)
『風立ちぬ』の解説でおもしろいものを教えてもらった。

町山智浩が映画『風立ちぬ』を語る(YouTube)

すみません…理解できなくてすみません…