2014-08-16

宇宙兄弟!航空宇宙博物館!アイスバケツチャレンジ!

今更で申し訳ない…『宇宙兄弟』がめちゃくちゃおもしろい。


ブームになっているときは横目でチラチラ見ていただけなのに、モーニングで1話目を読み、Kindleで期間限定3巻まで無料だったので、思わずポチったら見事にはまってしまった…

あまりにおもしろかったので、スミソニアンの航空宇宙博物館へもう1回行ってしまったくらいだ。
ブライアン・J(注意:作中の英雄的宇宙飛行士)はいなかったけど、エンデバーの最終打ち上げの映像に見入ったり、アメリカとロシアの宇宙開発競争について思わず熟読したりした。た、楽しい…

おおっ、これは日々人も着ていた与圧服ですな!
作中で出てきたとき、「なんで打ち上げの時にはこれを着てるのに、宇宙に行ったら脱いでるんだろう?」と思っていたんだけど、解説によると、1986年のチャレンジャー号の事故を受けて、発着陸時の不測の事態から飛行士たちを守るために作られたのだそうだ。なるほど…

こういうシーンもあったなと思ってぱちり。

月の上を移動する車。こう見ると超シンプル。

宇宙服。地上で着たら、めちゃくちゃ重そう…と思って見てみたら、やっぱり100kgくらいあるらしい。うひゃー。

ドッキングしたアポロとソユーズ。
恥ずかしながら解説を読むまで知らなかったんだけど、この時代のアメリカと旧ソビエトの宇宙開発競争はほんとに激しい。1960年代後半という、今よりもいろんな面で遅れていたであろう時代に、毎月(毎「年」ではない!)のように宇宙に何かしらのものを打ち上げていたなんて、ちょっと信じられない。今よりも全然お金がかかっただろうしなあ。
そして開発「競争」から「協力」の時代となって、その結果として上の写真のアポロとソユーズがあるわけだが、すぐ後ろにはひっそりと、「2002年、アメリカとロシアは核兵器を減らす合意書に調印をした」みたいなことが書いてあった。
「なくす」じゃなくて「減らす」というところに、冷戦が完全に終わったわけじゃないんじゃ…と不安になる平和ぼけの日本人はわたしだ。

ところで本編の中で出てくる難病「ALS」だが、最近、ALSの認知度を上げるための「The Ice Bucket Challenge」という活動が行われている。

ALS Ice Bucket Challenge Takes U.S. by Storm(ALS Association)

これは指名された人が、氷水を頭からかぶるか、100ドル寄付をするかしなければいけないという取り組みなのだが、かなり大物も氷水をかぶっていてなかなかおもしろい。大物たちはもちろん、水をかぶるだけではなくて寄付もしているようだ。

The best Ice Bucket Challenge videos (The Verge)


The Vergeのこの記事には、主にテック系の人たちのチャレンジがまとめられていておもしろい。ビル・ゲイツとAmazonのジェフ・ベゾスのやつがなかなか洒落が聞いていてお気に入りだ。大好きなジミーさんも!


ということで、ビル・ゲイツの動画を貼っておきます。

ちょっとみんな気持ち良さそうに見えるのは、暑いからだろうか…
ともあれ、こういう活動が瞬時に流行るインターネットの時代とアメリカの風土はいいなあと思うのであった。

2014-08-05

タイムズスクエアの着ぐるみ狂想曲

ニューヨークはタイムズスクエアの風物詩。そのひとつに色々なキャラクターの着ぐるみが挙げられるのではないだろうか。
ディズニー、セサミストリート、スパイダーマン、エトセトラエトセトラ。
ここで念のための注意だが、間違ってもディズニーランドで見かけるような完成度が高い着ぐるみを想像してはいけない。この着ぐるみのクオリティーたるや、「ゆるキャラって言えば許されるかな」というレベルである。

大衆の前で携帯いじってる…しかもこれみよがしに「Tips」と書かれたバッグ…
こういうときばかり、プロ根性はないのか!と言いたくなる日本人のわたしだ。

ともあれなんだか気になるこの着ぐるみたち。先日ニューヨークタイムズがこのビジネスについて、なかなか読み応えのある記事を掲載していた。
そのまま翻訳するのも芸がないので、Q&A風にして紹介したい。

Spider-Man Unmasked! Elmo and Minnie, Too
The Lives Behind Times Square Cartoon Characters(2014/8/2)

Q. 最初に着ぐるみが登場したのはいつごろなの?
A. この世界のベテラン(!)によると、2000年代初頭。
ふむふむ、10年ちょっと前ということだそうだ。
記事の中ではメキシコからの移民であるBertaさん(50歳)が、10年前に他のふたつの仕事と掛け持ちして、エルモの着ぐるみに入る仕事を始めたと語っている。
…ってことは、40歳で着ぐるみデビュー!?
ちょっと衝撃だったので日本のこの業界に詳しい人に聞いてみたところ、「おっさんおばちゃんばっかりだよー」という答えを得た。ここでは「おっさんおばちゃん」の定義論争をするつもりはないので次。

Q. 着ぐるみのみんなはどこから来てるの?
A. 魔法の国…ではなく、ニュージャージーのPassaicというところから通勤している人が多い。
なんと、魔法の国はニュージャージーでしたか…
Passaic(パセイク、というような発音)というこの街だが、調べてみるとタイムズスクエアから20キロほど離れたバスで1時間程度の場所にある。
記事によるとこの街は労働者階級の人が多く住む場所だそうで、着ぐるみ業を営む人がたくさんいるらしい。メキシコ人のMiguelさんがNYTに語ったところによると
「隣の家にはエルモが5人(体?)いるし、逆側にはクッキーモンスターとミニー。向かいの家にはプーさんとミニーがいる。あ、そういえば私は1匹(体?)クッキーモンスターと住んでます」
…すごい。この場所にテーマパークができてしまいそうな勢いである。
さて、続いては誰もが気になる疑問。

Q. 1日いくらくらい稼げるの?
A. 人によるけど、8時間で30ドルから200ドル強くらい。
うう、30ドルは厳しい。確かにわたしみたいな「すれた」観光客はああいうのウザイ!と思ってスルーするもんなあ。8時間で30ドルとすると、時給換算3.75ドル…暑さと寒さと冷たい観光客に耐えてこの金額はきつい。
一方、大人気着ぐるみになって、8時間で200ドル稼げたとしたら、時給25ドルである。ニューヨークの最低賃金が8ドルということを考えると、悪くない金額だ。でも…

Q. タイムズスクエアの着ぐるみが、以前より増えている気がするんだけど?
A. 当たり。前からゆっくり増加傾向にはあったけど、2011年に歩行者用スペースができてから着ぐるみが爆発的に増えた。
ふーむ、着ぐるみ間の競争は激化しているようだ。確かにわたしが住み始めてからもどんどん着ぐるみの数が増えてきている。
新参者がひしめくこの業界について、20年前からタイムズスクエアで自由の女神を演じているコロンビア人のJuanさんは、「私の業界は破壊されつつある」と悔しさをにじませている。
参考までに、原文では、「pedestrian malls」という単語が出て来る。これは広い道の中央分離帯のようになっている歩行者用スペースのことっぽい。日本語でどう書けばいいかわからないのでそのまま書いているが、こんな場所である。

ちょっとわかりづらいのだが、赤い傘が出ていて、人が歩いている場所が「pedestrian malls」と呼ばれているようだ。この部分ができたのって2011年なんですなあ。

Q. あれって違法じゃないの?
A. 微妙なところ。市の能率に基づくと、寄付の回収は適法だが、積極的な物乞いは違法。
予想通り、グレーなのだそうだ。ところで積極的な物乞いってどんなだろう…つきまとう感じだろうか。
しかし、この法律が広く知られているかというと微妙なところで、その原因のひとつには言葉の問題が挙げられるそうだ。着ぐるみの中の人たちは、英語が喋れない人が多いとのこと。
さらに最近、スパイダーマンの格好をしていた人が警察官を殴って逮捕されるという穏やかではない事件も起きていて、着ぐるみたちのジョブセキュリティーはなかなか厳しそうである。

ニュージャージーから毎日1時間かけて通ってくる着ぐるみたち。下手をすれば時給3.75ドルで炎天下の中1日中立ち続ける過酷な仕事…
一緒に写真を撮って、彼らの役に立ちたい!という人もいるだろう。

Q. 写真を撮りたいときはいくら出せばいいの?
A. 1ドル。ただし、着ぐるみ1体につき1ドルずつ出してね!
だそうです。
しかし、前述の通り、着ぐるみが蔓延している今、写真に無理矢理入ろうとする着ぐるみもいるんじゃないかなあと思ってしまうのだが。
実際、トイストーリーのジェシーとエルモとグローバーと写真を撮った日本人観光客が1人1ドルですよーと言われているシーンが記事の中で出てくる。
いやなときはいやと言いましょう。

Q. 最後に、仕事への意気込みをお願いします。
A. 私たちは路上のアーティスト。観光客が本当の自由の女神にもてなされたと感じられるくらいのおもてなしをすれば、アメリカ旅行の素晴らしい思い出になるでしょう。
これは、24歳のドミニカ人自由の女神、Manuelさんの言葉。
「ほとんどが芸術的センスがない、お金稼ぎを目的としている着ぐるみだけど」とも言っているが、こんな風に思って着ぐるみを演じている人がいるというのには心がなごむ…というか、最初にプロ意識が云々とか言ってごめんなさい、という感じだ。

彼らはアメリカで生計を立てる術として、着ぐるみという道を選んだ。
着ぐるみの中には、汗と笑顔と、それぞれの人生がつまっている。


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(2014/8/12追記)

このNYTの記事が呼び水になったのかはわからないが、着ぐるみ関係のニュースがいくつか出てきていたので追記しておきたい。

Times Square Characters Feel the Heat (WSJ, 2014/8/10)
あらら、警官が「着ぐるみとの写真撮影は無料です。チップは任意です」と書かれたチラシを配り始めたらしい。着ぐるみ4人(体?)が逮捕されたそうだ。

EXCLUSIVE: Times Square costumed characters band together with goal of forming labor union (DAILY NEWS, 2014/8/12)
警察の動きに対抗して、着ぐるみたちが組合を作ろうとしているという話である。
将来的にはこのビジネスは規制される可能性があるとも書いてあるので、見られるのは今だけと言えるかもしれない。お早めに。チップは任意です。