その日の父は、なんだかちょっと違った。
いつも食卓にご飯が並ぶまでパソコンに向かってる仕事をしているくせに、「ご飯の用意しなきゃな」とか言って、配膳を手伝おうとしている。
わたしの夫が遊びにきているからはしゃいでいるのかなーと眺めていたら、母から衝撃発言。
「お父さんの作ったお味噌汁、食べてね」
!!!!????
お父さんの!?作った!?お味噌汁、だとー!?!?
「はあ!?」
妹が意味不明と訴えんばかりの声をあげた。彼女が声をあげなかったら、わたしが何か言っていたと思う。そのくらい、めずらしい出来事だったのである。
結局、母がほとんど配膳した。
父作のお椀によそわれたお味噌汁は、輪切りにされた若竹と何やら魚のようなものが入っている。
「筍と鯖缶のお味噌汁だって」
聞いたことないメニューを母が説明する。いただきまーすと、おつゆを口に運ぶ。
「ん、これおいしいじゃん」
「わー、おいしいー」
わたしと夫が口々に感想を述べるが、照れくさいのか「うん」とうなずいただけで、父は何も言わない。
「おいしいけどさー…わたし、お父さんの料理って生まれて初めて食べた」
妹が釈然としないような口調で不満を述べると、母が苦笑した。
「昔、お姉ちゃん(わたし)が小さい頃はチャーハンとか作ってくれたりしたよね」
フォローなのかよくわからない母の言葉に、やっぱり父は食べるふりをして無反応だった。
そう、わたしも母も、父の手料理を食べるのは実に20年ぶりくらいだった。
このできごとについて、「夫と久々に会えて嬉しくて手料理を振る舞ったのかなー?」と考えていたのだが、ちょっと違うような気がしてきた。
わたしはしょっちゅう、夫が作ってくれたおいしいご飯の写真を、母や弟、妹にメッセンジャーで送っている。わたしの夫は家で仕事をしていることもあり、平日ほぼ毎日ご飯を作ってくれるのだ。
そんなある日、弟の奥さんが「作ってもらいました!」と弟作のパスタの写真を家族全員に送ってきた。写真の中のカルボナーラは、なかなかおいしそうだった。
このような状況の中、今回、父の手料理が20年ぶりに登場したのは、
「もしかしてお父さん、わたしの夫や弟のように、自分は仕事だけじゃなくて家事もできるんだよアピールがしたかったんじゃないだろうか!」
と邪推をしてしまう。
そして、そんな父が、素直でいい奴だなー、と思えてきた。
きっかけはみんなに褒められたい、認められたい、という気持ちなのかもしれないが、自分は仕事をしていればいいと言わんばかりの父が母を手伝ったという事実はとても価値のあるものだと思う。
わたしはそんなことを狙って写真を送っていたわけではないけど、わたしの夫や弟がご飯を作るのを見て、父が「家のことは妻に任せて、男子厨房に入らず」みたいな古臭い形から脱皮しかけていると感じたのだ。
思わぬところから影響を受けて、人の考え方や行動が変わっていくのだなあと再確認させられた一件だった。
影響を及ぼす範囲というのは近い友達にとどまらないような気がする。
とても手が届かないような憧れの人だったり、ちょっと名前を知ってるくらいの出身地(学校)が同じ人だったり、ましてやインターネット上で書かれたものを見かけた知らない人だったり。
たぶん、中心から近い部分には大きな波が立つ波紋のように、その人が近ければ近いほど、自分の心に起こる波は大きいだろうけど、思いがけず遠くにも小さな波は届いている。
いいことも、悪いことも、そうやってどんどん伝わっていく。
自分の心に触れるものがあったら、それをじっくり観察してみて、真似したいものは単純に真似してみていいのかもなーと思った。
70歳の頭の固そうな地方在住のおじいさんである、わたしの父でも新しいことができたんだから、誰でも真似することはできそうだ。
そして、こういう影響の伝搬から、常識だったり、時代だったりが少しずつ変わっていくような気もする。
となると、信念に基づいた行動を随時公開することは、意味があるのかもしれない。
このブログも誰かの心に触れて、何かの行動を後押しできればいいなあなんて思った。
あ、今気づいたんだけど、お味噌汁の写真撮り忘れた!
きっと父は弟や義妹に「お父さん作だよ!」と写真を送ってもらいたかったに違いない。ごめんよーーー。
次回作に期待だ!
いつも食卓にご飯が並ぶまでパソコンに向かってる仕事をしているくせに、「ご飯の用意しなきゃな」とか言って、配膳を手伝おうとしている。
わたしの夫が遊びにきているからはしゃいでいるのかなーと眺めていたら、母から衝撃発言。
「お父さんの作ったお味噌汁、食べてね」
!!!!????
お父さんの!?作った!?お味噌汁、だとー!?!?
「はあ!?」
妹が意味不明と訴えんばかりの声をあげた。彼女が声をあげなかったら、わたしが何か言っていたと思う。そのくらい、めずらしい出来事だったのである。
結局、母がほとんど配膳した。
父作のお椀によそわれたお味噌汁は、輪切りにされた若竹と何やら魚のようなものが入っている。
「筍と鯖缶のお味噌汁だって」
聞いたことないメニューを母が説明する。いただきまーすと、おつゆを口に運ぶ。
「ん、これおいしいじゃん」
「わー、おいしいー」
わたしと夫が口々に感想を述べるが、照れくさいのか「うん」とうなずいただけで、父は何も言わない。
「おいしいけどさー…わたし、お父さんの料理って生まれて初めて食べた」
妹が釈然としないような口調で不満を述べると、母が苦笑した。
「昔、お姉ちゃん(わたし)が小さい頃はチャーハンとか作ってくれたりしたよね」
フォローなのかよくわからない母の言葉に、やっぱり父は食べるふりをして無反応だった。
そう、わたしも母も、父の手料理を食べるのは実に20年ぶりくらいだった。
その横で、夫は気を遣ったのか否か、お味噌汁をおかわりしていた。
このできごとについて、「夫と久々に会えて嬉しくて手料理を振る舞ったのかなー?」と考えていたのだが、ちょっと違うような気がしてきた。
わたしはしょっちゅう、夫が作ってくれたおいしいご飯の写真を、母や弟、妹にメッセンジャーで送っている。わたしの夫は家で仕事をしていることもあり、平日ほぼ毎日ご飯を作ってくれるのだ。
そんなある日、弟の奥さんが「作ってもらいました!」と弟作のパスタの写真を家族全員に送ってきた。写真の中のカルボナーラは、なかなかおいしそうだった。
このような状況の中、今回、父の手料理が20年ぶりに登場したのは、
「もしかしてお父さん、わたしの夫や弟のように、自分は仕事だけじゃなくて家事もできるんだよアピールがしたかったんじゃないだろうか!」
と邪推をしてしまう。
そして、そんな父が、素直でいい奴だなー、と思えてきた。
きっかけはみんなに褒められたい、認められたい、という気持ちなのかもしれないが、自分は仕事をしていればいいと言わんばかりの父が母を手伝ったという事実はとても価値のあるものだと思う。
わたしはそんなことを狙って写真を送っていたわけではないけど、わたしの夫や弟がご飯を作るのを見て、父が「家のことは妻に任せて、男子厨房に入らず」みたいな古臭い形から脱皮しかけていると感じたのだ。
思わぬところから影響を受けて、人の考え方や行動が変わっていくのだなあと再確認させられた一件だった。
影響を及ぼす範囲というのは近い友達にとどまらないような気がする。
とても手が届かないような憧れの人だったり、ちょっと名前を知ってるくらいの出身地(学校)が同じ人だったり、ましてやインターネット上で書かれたものを見かけた知らない人だったり。
たぶん、中心から近い部分には大きな波が立つ波紋のように、その人が近ければ近いほど、自分の心に起こる波は大きいだろうけど、思いがけず遠くにも小さな波は届いている。
いいことも、悪いことも、そうやってどんどん伝わっていく。
自分の心に触れるものがあったら、それをじっくり観察してみて、真似したいものは単純に真似してみていいのかもなーと思った。
70歳の頭の固そうな地方在住のおじいさんである、わたしの父でも新しいことができたんだから、誰でも真似することはできそうだ。
そして、こういう影響の伝搬から、常識だったり、時代だったりが少しずつ変わっていくような気もする。
となると、信念に基づいた行動を随時公開することは、意味があるのかもしれない。
このブログも誰かの心に触れて、何かの行動を後押しできればいいなあなんて思った。
あ、今気づいたんだけど、お味噌汁の写真撮り忘れた!
きっと父は弟や義妹に「お父さん作だよ!」と写真を送ってもらいたかったに違いない。ごめんよーーー。
次回作に期待だ!
こんにちは。お二人のブログ楽しみにしています。
返信削除昨年の暮れに父をなくしたのでいろんな意味で泣けました。
やぱーりわかりづらいアピールする人で、それも支援魔法の重ねがけみたいなのは苦手で
唐突にコミュニケーションをとろうとする人でした。
ああ。でもわかってあげられてるのですね!(笑)
どうかお父さん大切にしてあげてください。
kurohataさん
返信削除こんにちは!コメントありがとうございます。まずはお父様のご冥福をお祈りします。
どこの家でも父親はコミュニケーションの取り方が下手だけど、なんとか話したい!と思っている、そんな感じなんだろうかと思いました。
無精者ですが、遠くに住んでいるので、悔いのないように親孝行したいものです。
なかなか素敵なお父様ですね。
返信削除そういわれてみれば、家の父は目玉焼きとつくるのが上手いという理由で大昔朝食の目玉焼きは父の作でした。
よくよく考えると、休みの日は家事を手伝うという父の心意気。いまさらながら考えさせられました。
MISSYさん
返信削除こんにちは!
実際目の前にすると、話は長いし、うざいなーと思うことも多々あるのですが(笑)、こういう出来事をよく考えてみると、結構いいとこあるじゃん、と思いましたー。
朝食はお父さんの目玉焼きっていい話ですね!そうやって、家庭の中で居場所を作る努力をしていたのかもしれませんね。